信じるものは輝いて








何故だかが口を利いてくれなくなり、一週間ほどが経過する。
まったく心当たりなんてないのだが、
現に彼女は露骨なシカトっぷりを披露しているわけで、
何かしら機嫌を損ねたのだろうと察しは付いた。


察しは付いたが、マルコはマルコで
非常に多忙なスケジュールに忙殺されており
(何故だかこんな時に限って、他海賊との諍いや、
わけの分からない仲違いなど面倒に巻き込まれるのだ)
の事は非常に気がかりだったが、顔を合わせる事さえ適わないでいた。


そうして過ぎ去った時間が一週間分だ。
親父の意向により、出来るだけ大きないざこざに昇華させないよう奔走し、
ようやく船へ戻ればの姿がキレイさっぱりなくなっており、
皆が(主にサッチ辺りが)大騒ぎしていた。


サッチはサッチで、疲れによりぼんやりと立ち尽くすマルコを目にした瞬間から
マシンガントークを繰り出すし、エースはエースで知った風な口を利く。


おいおいちょっと待ってくれよぃ。
俺ァまったく心当たりがねェし、一番困惑してんのもこの俺だ。


憶測でモノを言うなと回転の鈍くなった頭をどうにか動かし、
現状を把握しようと試みる。まあ、無理だった。
大体だが何となくの行きそうな場所は見当が付くし、
話を聞く分には今日の昼ごろまでは船にいたらしい。
半日で動ける範囲なんてたかが知れているし、


兎も角この疲れきった身体を休め、万全の状態で捜しに行きたい。
という思い一つ彼らには何故か伝わらず
(こいつら、俺を過労死させるつもりじゃねェだろうな)
捜索隊』なんて臨時の隊まで作られては返す言葉もない。
なすがまま、『捜索隊』のミーティングに連行された。


議題は『何故が出て行ったか』そして、『はどこへ行ったのか』
何を喰ったらそんなミーティングが行われるのかが理解出来なかったが、どうにか堪える。
泥のように疲れきった身体は一刻も早く睡眠を貪りたいと悲鳴を上げているが、
このまま放置していてもロクな事にならないだろうとは、予想がついていた。


「て言うか、何したんだよ。マルコ」
「…何がだよぃ」
「ケンカしたんだろ?」
「覚えが、ねェ」
「いやいや、あんだけは怒ってたじゃねェか」


サッチが言うのならば、やはり彼女は怒っていたのだ。
確かに、マルコが声をかけても背中を向けるし、
ちっとも近寄って来なかったような気もしている。
いやいや、だけど。口で言わなきゃ何一つ分からねェよぃ。


「見切りつけるとか言ってたよな?」
「はぁ?」
「言ってた言ってた!他の男を捜すとか何とか」
「あ?」
「…本当に身に覚えがねェのか?マルコ」
「ねェよぃ」
「あいつの誕生日、完璧にスルーしてたよな、お前」
「!!!」
「俺らでさえ覚えてたってのに…」


眠気なんて一気に醒め、今日の日付を思い出す。
一週間前、が唐突に怒り出した前日が彼女の誕生日だった。
毎年、何かしら祝っていたにも関わらず今年に限って完全に忘れていた。


いや、確かにクソほど忙しかったという事もあるが、
これは完全にこちら側のミステイク。
周囲の目が自分を責め立てているようにも思える。


まぁ、お前らが面倒を起こさなきゃこんな事には…。


「確かに、多忙だったよ。お前は」
「…」
「歳も歳だ、疲れてもいただろうよ」
「…(お前が言うなよ)」
だって手放しで喜べやしねェ年齢だけどな」
「…(エース、お前。に殺されるぞ…)」
「指摘されなきゃ気づかねェってのも、どうかと思うぜ。思う人―!」


皆が手を上げる。
ああ、これはミーティングなんかじゃなく、
俺を責める会だったのかと気づいた。
詰まらねェ真似をしやがって…。


黙ったまま立ち上がり、そのまま船から飛び出した。
もう、最低三日は戻らねェ。
何があっても知らねェ、手前らでどうにかしろぃ!
の行き先は何となく読めている。
あいつの反応も手に取るように分かる。


だから、お前達のお守りは一旦放棄するよぃ。




明るい方のマルコです。
サッチとエースが当然のように出てくるな。
しかし、主人公、出番ねええええ
マルコを書きたかっただけだろお前…

2010/9/4

蝉丸/水珠