過ちだろうとも





海軍だなんて、あんたロクデナシの仲間なのね。
ベッド内での会話、それの糸口としては最悪の言葉を口にした
他意があるのかないのかが分からない笑顔を向けた。
どういう意味だよと、こちらも笑いながら問うたスモーカーは、
シーツ内で密かに絡まる足、それの感触に意識を取られているわけで、
正直な所、言葉を交わすどころではないわけだ。
こんな、まだ数回しか寝た事のない女相手に
言葉を交わす必要はないと、頭のどこかでは分かっている。


「うん?お前…」
「やだ、どこ見てんのよ」
「…海賊か」
「何よ今更。知ってた癖に」
「疑っちゃいたが、確信はなかったな」
「何?海賊とは寝れないっての?」
「とっくに寝ちまった後だろうが。今更、どうこう言うつもりはねェよ」
「なら、もう寝ないって事ね」
「!」
「図星でしょう」


つい先刻まで貪りあった相手の言葉とは、とてもじゃないが思えない。
この女のセックスには感情が付いて回らないのかと思い、
じっと顔を見つめれば何故だか腹の底が透けたようで気まずくなった。
まだ湿っているシーツには互いの体液が染み付いているだろう。
内腿に施された見覚えのある海賊のマークに気づいたのは
何も今日が初めてなわけではないのだ。
それこそ、最初に気づいていた。


「…別に、後悔なんてしてないけど、残念ね」
「…」
「好きだったのに」


たった数回寝ただけで何を言ってやがると思いながら、
言葉も発せずの身体を抱き寄せていた。
これが、この女の手なのかも知れない。
もしかしたら、自分はまんまと敵の罠に、
手中に転げ落ちてしまったのかも知れない。
畜生、だから俺ァ海賊が嫌ェなんだ。


「あんたみたいにロクデナシな男、見た事ないわ」
「さっきから、うるせェな。失礼な女だぜ、まったく」
「馬鹿ね。こんな事したら、期待するわよ」
「好きにしろ、俺ァ責任なんて持てねェがな」


明日だとか明後日だとか、兎に角、
今より先の自分が何て馬鹿な真似をしてしまったんだと、
思うとしても目の前の女を抱き締めずにはいられない。
欲に駆られているだけなのかも知れない。
昔から素直じゃないこの心は、未だに裏腹な思いを抱いている。





スモーカーが大好きすぎるんです。
只、それだけの話です・・・。
過ち、おかしてええええ
2010/9/16

AnneDoll/水珠