奪還せよ





何故がこちらの気持ちに一切の興味を持たないのか、
そんな事を考えていればあわや足を踏み外しそうになり焦った。
仲間になれといえどもそんな冗談は心の底から勘弁して、だとか、
海賊にだなんてあたしは絶対にならない、だとかだ。
そんな言葉を頂戴し、それなら仕方がないと諦める道理もないが、
無理矢理仲間にしても意味がない事だけは分かっていた為、
どうするものかと悩んでいれば
あの女はいつの間にかユースタス屋の船に乗り込んでいたものだから
青天の霹靂とはまさにこの事だぜと三日三晩、眠れない夜を過ごしたわけだ。
そりゃあ、ベポも心配するぜ。


よりにもよって何故ユースタス屋なんだと食ってかかれば、
だって同郷の知り合いだもの、だなんて
まったく知らないの過去を知る羽目になり心は複雑。
この心が病に冒されていると知った。


ユースタス屋は相変わらずのむかつく態度だし、
で、そんな奴等と仲睦まじく話をしているし、
血圧のバロメーターが吹っ切れて昇天するかと思った。


「悪ぃ事は言わねェ。さっさと俺の仲間になれ、
「仲間?いや、無理」
「そいつらよりも、俺達の方がお前に合ってるだろ」
「いや、知らないし」
「知らないってお前…悪名高きユースタス・キッドだぞ!?」
「手前、人のクルーを口説きつつ、何気に俺の悪口を言ってんじゃねェぞ」


呆れたようにそういうユースタス屋はひとまず放っておいて、
今、一番の問題はそ知らぬ顔をしているだ。
ここまでお前の事を思ってるってのに、
どうしてお前はそこまで気づかない振りをしていられるんだと、
思いをそのまま伝えても、何を勘違いしているのよと相変わらず彼女は冷たいもので、
ユースタス屋に絡む気力もなくなった。










「何を勘違いしてるのかしら、あいつ」
「…さァな(仲間だって思ってんじゃねェのか、あいつ)」
「たまたま遠出をするから、乗ってるだけなのにね」
「あァ(しかし、昔っからだが、こいつはこいつで相変わらず鈍い女だぜ)」


膝から崩れ落ちたローに、他のクルーが駆け寄る姿を眺めながら
キッドと話しているは、何にも気づいていない。
ローの嘘みたいに真摯な愛情にしろ、わざわざ連絡をもらったからと、
遠回りをして自分を拾ったキッドの気持ちにも。
まあ、昔からこいつはこんな奴だと馴染みの男は納得しているが、ローはどうだろう。
膝から崩れ落ちるほど落ち込んだとしても、
がキッド達の船に乗り込んでからというもの、延々後方について回るローの船は、
彼女が目的地につくまでストーキングを続ける。


「どうせ明日には、平然とした顔で又来るんでしょ」
「…違いない」





ロー、ごめん…
ローとキッドとキラーを
絡ませたかっただけです…。
2010/11/28

AnneDoll/水珠