壊したくなるからもう愛さない





もう付き合ってられないと呆れられ、
がこの部屋を出て行ってからふたつめの夜だ。
元々が正反対の気質なもので、ケンカなんて日常茶飯事だったが、
まあそれでも構わないと思っていた。


共に暮らし時間を共有するような関係ではない。
会いたい時に顔を出す。好きな時に出て行く。
只でさえ衝突の多かった二人だ。
共有する時間が増えれば増えるほど、厄介ごとも増えると、
互いに気づいていたのだと思う。


そんな状況に陥った男女が、それを恋と呼ぶだなんて愚の骨頂だ。
そんなものは恋でなく、無論愛でもない。
只、目先の欲求に正直な振りをし、必死に弱さを隠しているだけだ。


心を持ち出されればいつ傷つけられるか分からず不安になる。
だから心を隠し、まるで遊びの体で接する。
とっくに心なんて持ち出されているのに。
どちらかがいなくなれば生きていけないなんて、余りにも情けなく口に出来ない。
それでも、そんな状態には陥っている。必死に、認めないまでも。
だって今更、どんな顔をして愛を囁けばいい。


ローもも安い愛に踊らされ、素直さは薄れてしまった。
自業自得だといえばそれまでだ。
これまで通り全てを切り捨てて生きていくのも捨てがたいが、
そうしていればこの有様なのだから望む方法ではない。


きっと、この二つの夜をあの女は別の船で過ごしている。
あいつの古くからの知り合いだとかいう、あの馬鹿たちの所で―――――


「クソッ!!」


どうにもならない苛立ちを抱えていたのは愛しているからだ。
愛しているから自分の思い通りに彼女を操りたくて、
そんな独占欲を知られたくなく、あえて突き放した。


自分なんて生き物は、腐った独占欲の塊だ。
の全てを把握して、そうして自分の好きなように、
自分の気持ちのいいように愛したいだけだ。


それでも無駄な美意識がそれをよしとしない。
自己愛までも強いのだから、打つ手がない。
は戻らず、又白けた空が朝を迎える。





ロー視点

2011/2/25

AnneDoll/水珠