壁より高い








どうしてこんな事をするのと聞く彼女を横に置き、その答は返さないでいる。
何を今更という気持ちもあるし、理由なんてあってないようなものだからだ。
今この時にそう思ったから。感情の赴くままに動いた結果。
こんなにもだらしのない自分を何故だか皆、まんまと受け入れてくれるもので、
正直なところ甘えているとは思うが只それだけ。


感謝の気持ちはないし、
それが当然だと思っているわけでもないが、何となくそれだけ。
その、思いやりのような感情はそこまでで、
きっとこちらの事を好きだからそんな真似をするのだろうと、そう思っている。
あながち嘘ではないだろう。


だからお前のような奴は非常に性質が悪いんだといわれる事も度々で、
それでも自身の中でまるで消化出来ずそのままにしている。
だって、勝手にそうするんだから仕方がねェじゃねえか。
別に俺は頼んじゃいねェぜ。


「まぁ、あたしはどうでもいいけどね」
「帰んのか」
「けど、あんた少しは自覚した方がいいんじゃないの」
「何を」
「あんた、結構ろくでもないから」
「何がだよ」
「自覚がないから分かんないのよねぇ、自分の事」


いつの間にか服を着たは憎まれ口を叩きながらこの部屋を出て行く。
この女と関係が始まったのはいつだったか。
これまでの関係性を一掃し、寝だしたのはいつ頃か。
そうしてそのきっかけは。


「そういうとこも好きなんだろ、正直」
「本当、びっくりするわぁ」


呆れた口調で軽く笑ったはこの部屋を出て行き、
彼女のいうろくでもない自分だけが取り残される。
それでも何が悪いのかはまったく分からないまま、
少しだけ軽くなった身体を持て余していた。





やはり個人的には
エースの性質の悪さよりも
ローの性質の悪さの方が悪質だと思う。

2011/7/23

AnneDoll/水珠