正しさですら不要に見えたた








軽い口付けを交わした後に、
もうこれで終わりにしようと心の中で決めたわけだ。
正直な話、これで何度目になるのかは分からない。
こちらの心の中では。
は一切知らない事象だ。


もう、こんな女に振り回されてたまるかという気持ちと、
こんな女の思い通りになってたまるかという気持ち。
こんな女にいいようにされて、
心を好き放題に乱されてたまるかという気持ちだ。


だからまったくコンタクトをとらないようにしたし、
あえて他の女に手を出したりもした。
だから今、当然の体で顔を見せたに対し
どうしていいのかが分からなくなっている。


は以前とまるで変わらず、
にこにこと笑いながらローの腰に手を回すし、軽口を叩くわけだ。


「…何?どうしたのよ、ロー」
「…いや」
「あたしはあんたの事がこんなに好きなのに」
「…」


毎度こうで、まんまとを抱き締めている自分自身に
ほとほと嫌気が差すのだが、これはどう解決すべき問題なのだろうか。
彼女のいいように操られ、この心は疲れきっているというのに、
こんな気紛れに寄越される愛情(のようなものだ)により恋の炎は蘇る。幾度も蘇る。


いつになったらこの恋は息絶えるのだろう。
心と身体を同時に満足させるべく使われているだけだと知っているのだ。
そんな事はとっくに分かっている。
それなのにどうしてこの心は満足を覚える。


「大好きよ、ロー」
「…あぁ、俺もだ」
「幸せね、あたし達」


そう。そうして口付け身を交わし、
そんな真似をした翌日にでもこの女は俺を裏切る。
いや、その瞬間から裏切っている。


この女がいう大好きという言葉は余りにもチープで、
余りにも有り触れている。
お前が大好きなのは、こうして両腕で抱き締めてくれる相手で、
それは俺じゃなくてもいいんだろうと、思ってはいるが口には出せず、
それなのにそれが真実だとも知っている。


だからきっと、これは馬鹿な真似だ。
きっと二日後にはしこたま酒に飲まれた状態で顔を出す。
こちらがどれだけ強く拒否しても一向に気にせず、両腕を広げこちらを招く。
恐らく馬鹿な真似をしているし、馬鹿なのだ。
それでも何一つ改善しないまま、心とやらは蹂躙されていく。





そして結局ロー。

2011/10/13

AnneDoll/水珠