月が泣く夜








ロクでもない人間だと分かっているつもりだ。
自分自身の嫌な部分は誰よりも把握している。
そうならないように気をつけていても、ふとした瞬間に露呈する。
改善されていないからだ。隠しているから、そうなる。
認める事も出来ず、だからといって開き直る事も出来ない。


嫌だからだ。そんな自分が死ぬほど嫌だ。
ガキ臭いし、みっともないし、何よりも下らない。
何故、ここまで理性を失えるのか、頭の病気さえ疑いたくなる。
それなりの時間を生きているのに、何故こうも同じ事を繰り返す。


「…又かよぃ、
「ごめんね、マルコ。めんどくさかったでしょ」
「危うくお前が嫌いになるとこだったよぃ」
「そうよね」
「…まぁ、そりゃ、冗談だが」


どの時点で失敗したか、だなんて後々に記憶を辿ればすぐに分かる。
でも、そんなものは無意味だ。
記憶を辿れば辿るほど、己の間抜けさが嫌になる。
欺瞞ばかりの己に嫌気がさす。
他人を愛する事が出来ないのかと思い違えるほどに。
誰かを愛する事は出来ず、その倍以上、己を愛する。
そんな人間は誰よりも嫌悪しているはずなのに。


「どうしてこうなるのかしら」
「…まぁ、そういう状態の時ってのは、理性がなくなる。
  、お前だけじゃねェ、誰だってそうだよぃ。まぁ、何だ…。
  そのふり幅が、お前は人よりも大きいんだよぃ」
「そして結局、何も残らない」
「めんどくせェ奴だな」
「まるで違うのに、傷つけられた気がして、裏切られた気がして―――――
 自分の事しか頭になくなって、
 あいつの事なんてまるで考えてなかった事には気づかなくて」
「まぁ、お前のそれは、時間が経てば何れ落ち着く。
 今は何も余計な事なんざ考えず、海軍でも殺してりゃいいよぃ」


そう。誰かに助けを求めているわけではない。
この、死ぬほど苦しい泥濘からは逃げ出す事が出来ないと分かっている。
これは自分自身で抜け出すしかないのだ。
時間が経過したらきっとこのクソみたいな汚い感情の吹き溜まりは
自然となくなるはずだ。


あんなものは愛でなかった、
又、偽者を掴んだのだと後悔する事は容易だ。
己の不出来を認めるよりは。
だから、今はこんな泥濘に浸かりきり、
正常な判断が出来ない振りをして、それでも心の奥底では理解している。
本当に、愛していた事実を知る。





まあ、誰を…?という話なんですが
いい聞き役、マルコ

2011/11/28

AnneDoll/水珠