運命なのだとがやさしく嗤うので





すっかり酒に飲まれたを背負い歩く事は珍しくない。
キッドと喧嘩をする度にはキラーを誘い酒を飲みに出かける。
キッドはキッドで、が一人で飲みに行くよりもキラー(という名の護衛を)
を連れて出かける方がまだマシだと思っているらしい。
確かに真夜中、一人で外を出歩かれるよりはマシだろう。


大して強くもない癖に、はよく酒を飲む。そうして飲まれる。
喧嘩の内容は口に出さず、キッドの悪口を言う事もなく、只、酒を飲む。


「気持ち悪い…」
「大丈夫か、
「ごめんねぇ…」
「気にするな」

このが仲間になるなんて思わず、
最初はキッドと手酷くやり合っていたというのに、運命とは分からないものだ。
キッドはキッドで最悪な女だとの事を呼んでいたし、
で馬鹿な男だとキッドの事を呼んでいた。
恐らく、生まれて初めて遭遇したであろう己に似た人間だったのだ。
だからキラーにしてみれば初めて会った気もせず、
正直な所、受け入れやすかった。


「―――――ねぇ、キラー」
「何だ?」
「あたしとキッド、もう駄目なのかな」
「…」


唐突に投げられた質問に思わず足を止めかける。
いや、いけない。普段通りにしなければいけない。
動揺を察されてはいけない。
当たり障りのないような言葉を返し、深入りしないようにしなければ。
もう少し歩けば船に辿り着く。


「何か、最近喧嘩ばっかり」
「今に始まった事じゃないだろ」
「もう嫌になったんじゃないかなぁ、キッドは」
「本人に聞くんだ、そういう事は」


俺には分からないよ。俺はキッドじゃないからな。


「ごめんねぇ、キラー」
「寝てろよ、後少しで着く」
「ごめんね…」


寝息が聞こえ始め、ようやく安堵を迎える心を知っている。
どちらも大事なものだから、あえて心を隠しただけだ。
きっと、似たもの同士だったから好きになってしまった。
いや、まだ認めない。そんな気持ちではないはずだ。そんな好きではないはずだ。
船が見え始め、相変わらずの光景を目の当たりにしたキラーは、
今日も運命とやらに弄ばれなかったと溜息を吐き出す。


が酒を飲みに出かけた後のキッドの行動を
逐一確認しているわけではないが、戻った時には座り込んで待っている。
だから眠り込んだをキッドに渡し、キラーの仕事は終了。
悪ぃなと呟くキッドに気にするなと返し、一言、二言と言葉を交わし別れる。


と出会った事も、キッドと出会った事も運命だと言うのならば、
甘んじてそれを受け入れる事しか出来ない。
二人の幸せを願っていると言えば、それは偽善になるのだろうか。
例え偽善と言われても、そんな他愛もない思いを捨てきれず、
の細い腕の感触を思い出していた。











キラーが気の毒すぎる。
というか、キッドとキラーの位置づけはこれでいいのか。
キラーはキッドに対して譲るという前提の話です。
この予想、外れないで頂きたい・・・!
2010/2/25

D.C./水珠