誰も本当なんて知らない





自我が確立している女というものは総じて扱い辛く、
どちらかといえば倦厭していたように思う。
それが覆されたのはと出くわしてからであり、
彼女の何がこれまでの女と違うのかといえば。
それは一つ。危うさだ。
ドフラミンゴが想定する危機をまったく察せない。
そんなやり方は到底賛同できないというのに、
どうにも他のやり方を選べないらしい。不器用だと思った。


そんな彼女だから、ひっきりなしに危機に遭遇する。
その都度、何の因果か目の当たりにしてしまう
ドフラミンゴは目を離せなくなり、今に至るわけだ。
他人の世話なんて焼く性分ではないというのに。


「やめときな、
「あたしがあんたの言う事を聞いた例があった?」
「…ねェな」
「でしょう?」


頬杖をついたまま大火傷をするを見つめている。
最初は海軍の将校だった。
お前は自分の置かれた立場ってヤツを
少しくらい考えなと言っても彼女は聞く耳を持たず、まさかの正面突破。
一目惚れというのは現実的でない。
見ず知らずの相手から唐突に好意を示された所で、
よっぽど色好きな輩でない限り、扱いに困るだけなのだ。
そんな事も分からないのかと呆れた。
そうして次は見知らぬ花屋の男。次は医者。次は何だった。


「なぁ、
「何?」
「もう諦めて、この俺と楽しもうぜ」
「…あんたと?」
「何もなしにこの俺が、
お前と一緒にいるだなんて思ってたわけじゃあねェだろうが」
「てっきり、優しさかと思ってたわ」
「…そりゃあ、笑えるな」


いつだって誰よりも側で様子を伺っていたのだ。
だから何もかもが分かる。嫌な所なんて特にだ。
目に付いて、だからか余計に気を奪われる。
それが恋だとは夢にも思わず、
物珍しさが先に立っただけだと思っていたが、
どうやら間違いだったらしい。


手元に置いておくには十分な力も持っているし、何より手放したくない。
恐らく意味は違うが、守ってやりたいと感じている。
自分以外の何者からも守ってやりたいと。


「手前が愛だの恋だの言ってる、
その詰まらねェ遊びがどういう結末を迎えてるか、
いい加減ストーリーも読めてきただろうが」
「毎回違うから分からないわ」
「馬鹿言うなよ。詰まらねェ遊びには詰まらねェ相手しか付き合わねェ。
手前が股ァ開いてる相手は総じて詰まらねェ奴等で、
詰まらねェ奴等は詰まらねェ噂を流すんだよ」
「…あんた、心配でもしてくれてるの?」
「馬鹿言うんじゃねェ」


そんな奴等を根こそぎ殺している事実をは知らない。
すぐに新しい恋を見つけるからだ。
それでも一度流れた噂は消えにくいもので、
内心苛立ちながらも噛み殺している。
まあ、詰まらない真似だ。


「あんたと、ねェ…」
「何だよ」
「そんな気、あるの?」


ここまで知り合った相手と寝れるのかと聞かれたドフラミンゴは、
それもそうだと一瞬思い、呆れたように笑う彼女を見つめる。
俺とお前は赤の他人、只の男と女で肉親でもないんだぜ。
今の所この事実はに伝わる事がない。


何れ伝わるのを待つしかないだなんて、
それこそ詰まらない真似だと思ったが、
実際問題それ以外手がないもので、
だからドフラミンゴはもう暫くの間、
詰まらない真似をしなければならないと溜息を吐いた。











ドフラミンゴメインって久々書いたなあ。
どうにも世話焼きドフラミンゴが多い。
もう、全然報われてないんだもの彼…
2010/3/10

なれ吠ゆるか/水珠