合わせ鏡の笑い声





嫌だ、ちょっとやめてよ、ロー。どうして気配を消して近づくの。
そういうのやめてって言ってたでしょう。
用があるんなら普通に声をかけてよ。
見てるだけだとか、そういうのは本当にやめて。
何もないの?あたしに何か用があるんじゃないの?
えっ?この前の話?それって仲間になれだとか、そういった話?
いや、あたしはちゃんと断ったわよね?
そもそもあたしは海賊になんてなる気はないのよ。
だから、今あたし、ちゃんとお断りしたでしょ?
含み笑いするのやめて。
ほら、今あたし仕事中なんだから邪魔しないでよ。
そうよ、手伝いをしてるの。
何のって、見て分かるでしょう?
ここのママさんにはお世話になってるから、お手伝いしてるのよ。
まあ、大体酒場だから昼間はやってないんだけど、
ランチだけはやってるのよ、ここ。
デリバリーもやってるから、あたしはそれを手伝ってるの。
だから道を開けて。
ここの海軍は結構、時間にうるさいんだから。
えっ、何?そうよ。これは海軍に届けるランチ。
だから、そこ、開けて。
海軍と知り合いなのかって?まぁ、顔なじみ程度よ。
お得意様みたいだし、配達はあたししかしてないから。
ああ、そうよ、そう。
この前あんたが見かけたって言ってた男も海軍。
デート?違うって言ったでしょう?
向こうが非番で、たまたま会っただけよ。
えっ、あれ、准将なの?
物腰の柔らかい男だから気づかなかったわ。
ちょっと!!今、床にぶちまけようとしたでしょ!
これは商品なのよ、分かってるの?
ああ、もう時間がないから本当に邪魔しないでよ、ロー。









いや、俺は気配なんて消してねェよ。
お前が鈍いだけなんじゃねェのか?
そういうのやめて、ああいうのやめてって、
お前には本当に禁止事項が多いよな。いや、嫌いじゃねェが。
用なんて特にねェ、けど、前も言っただろう、俺は。
お前に会いに来たんだよ、お前がちっとも仲間にならねェから、
この俺がわざわざ貴重な時間を割いて足を運んでるんだぜ。
おい、今、俺の話聞いてなかっただろ。
前々から感じてたんだが、
お前のそういう所は改善の余地があると思うぜ、俺は。
そもそも、俺はお前に仲間になって下さいだなんて、
お願い事をしたつもりはねェ。命令だ、命令。
仲間になれって言ったんだよ。お前には断る余地がねェんだ。
海賊になる気がないとか、そういう事は聞いてねェんだよ。
…いい匂いだな、それ。
丁度いいな、昼飯でも一緒に食おうと思ってたんだ。
何?仕事?配達の?お前が?
それこそ似合わねェし、海軍に!?意味が分からねェ。
おい、。一から十まで完璧に説明するんだ。
この俺が、納得出来るようにな。
いや、ちょっと待てよ?この前、町で一緒にいた男だな?
おいおい、ふざけるなよ…。
俺と野郎を天秤にかけようってのか?
いい度胸だが賢くはねェな。
けど、こいつはお前が仕掛けたんだ後悔するんなら今の内に―――――









毎度のやり取りを耳にするキャスケットは、
早く付き合ってしまえばいいのにとペンギン相手に呟く。
ペンギンも心は同じらしいが、もう慣れの境地に達している。
もし運命とやらがあるのなら、この二人はそれに踊らされているのだろう。
何れは船に乗り込むのだろうし、
そんな話に飛躍していれば追い出されたローが
不機嫌そのものの姿で戻って来た。慌てて口を閉じた。











比較的明るめのロー。
理由はないけど突然の一人称。
ローの仲間、早く名前明かされないかな…
2010/3/10

なれ吠ゆるか/水珠