世界に見捨てられた君と僕





いい加減、飽きが生じ始めた位だ。
互いが互いを異常な程、意識している状態。
故に衝突し、素直でないものだから気に食わないだけだと吐き捨てる。
キラーの発する、お前達は似ているな、という発言に喰ってかかり
(それにしたって何も同時に叫ばなくてもよかったのだ)
口を開けば互いにつまらない悪口ばかりだ。


「……なぁ」
「……」


同世代のルーキーの中にボニー以外の女がいると聞き付け、
どんな面構えなのかと近づいてみれば、気の強い女が姿を表した。
名前は
彼女も何かしらの能力者らしいが、今のところキッドは目にしていない。


「おい、聞いてんのかよ」
「……」


華奢な体つきだと思った。
濃い化粧の下に隠された素顔はきっと幼く、
それでも彼女は死ぬまで強がり続ける。
自分達のような輩に取って喰われない為に。仲間を守る為にだ。
そんな彼女の置かれた立場を理解したのは随分時間が経ってからで、
だからキッドは非常に動揺した。


「おい、
「……」
本心こそ分からないまでも、恐らくは興味を惹いたのだろう。
彼の世界に名だたる男は言葉巧みに近づいた。
甘い餌をちらつかせ、酷く親身にだ。
それでも腹の内は透けて見え、
は事を荒立てないようにと水面下の攻防を続ける。孤独な戦いだ。
どうして、気づく事が出来なかった。


!!」
「……何よ」
「何も、ねぇよ」
「どうしてずっとそこにいるのよ」
「……」
「……」
「お前こそ」


今、二人は燃え盛る船の前にいる。
轟々と音を立て海に沈みゆく船はのものだった。
幾ばくかの命を引き摺り飲み込まれる様を
只、見つめる事しか出来ない。


お遊びの終着点がこれだ。
の決断、そうして曲げられないもの。
全てが理由となり、防ぐ事が出来なかった理由は
彼女の力が及ばなかった点にある。


「……行くぞ」
「……どこに?」
「分からねぇよ」
「さっきから何なの、あんた」
「……」


今にも泣きそうな顔をしたお前を
一人にしておけないなんて、そんな事は言えない。
結局一人になってしまったを放ってなど。
同情ではないと思っているが、上手く気持ちを整理する時間もない。


「全部、あたしのせいね」
「……」


そんな事はないと言えず、慰めの言葉を見つける事も出来ず
只、細い背を見つめていれば無性に哀しみが膨れ、
まるで自身を慰める様に彼女を抱き締めていた。











初、キッドで暗い話・・・?
傷ついた相手を目の当たりにした場合、
慰めたりするのが下手な気がして・・・。
お遊びをしかけたのはドフラミンゴとかでどうか。
又、ドフラミンゴかよ・・・。

2010/3/14

D.C./水珠