やれやれ、又そんな事をしてやがると口にしてしまっていたのだろうか。
まあ、よく覚えていないが、振り返った彼女の表情を読めば、
似たような事を(気にも留めず)口にしていたのだろう。
悪意はないんだよと続けても通じるだろうか。
恐らくだが、通じない。
一枚窓を過ぎれば焼け付く日差しが地面を焦げ付かせている。
こんな場所じゃあろくにサボりも出来やしないと呟いたクザンは、
これ又、面白い玩具を見つけてしまった。
暑い国に相応しい装い(服というか、布に近い)
を見つけ音もなく忍び寄る。
よく日に焼けたの肌は煌いており、
まあ、その流れから上記の台詞に繋がるわけだ。
「…久しぶりだっていうのに、随分な物言いじゃない?」
「あんたねぇ、ちゃんと働きなさいよ」
「いや、人に言えるの?」
「まぁ、言えないね」
このとの関係性を明確に説明する事は出来ない。
元海軍、これは事実だ。
出会いは互いに同じ立場だった。
「そんな格好で、これから何するの」
「関係ないでしょう?」
「関係はないけど、興味はあるね」
「興味なんかない癖に」
「又、そんな可愛気のない言い方をする」
お約束どおり、クザンもに手を出しかけた男の一人だ。
規模としては大きいかも知れないが、
社会自体は狭い海軍の中、の存在は目立っていた。
若さゆえの過ちも多々あった年頃だ。
それでもは海軍外の男に目を奪われた。
いや、目だけでなく、身も、心も。
「あんた、今何やってるの」
「海賊」
「何?」
「って言ったらどうする?捕まえるの、あんた」
「…」
転がり落ちる様は見事なものだった。
男に現を抜かし、骨抜きにされたは海軍を辞め、一旦は姿を眩ました。
正直な所、海軍内はの噂で持ちきりだった。
そんな噂を一蹴し、再度姿を見せたは、まあ、何だ。
予想の斜め上を闊歩していた。
「悪い事をしてたら、そりゃまあ。お仕置きしちゃうよ。僕は」
「何?何か、やらしいんだけど」
「戻って来な、」
「あんた、顔合わす度にそう言うけどさぁ」
「あんたが欲しいモンは、手に入らねぇから。そんな事をしてたって」
「知った風に言わないで」
ドフラミンゴの側にいるを目の当たりにした瞬間、
センゴクが怒りだした光景を思い出す。
あの馬鹿は一体何をやっているんだと、あれは大層な怒りだった。
可愛がっていた分、余計にだろう。
対するクザンは分かりやすい女だと逆に好感を抱いた。
目に見える強さ、そうしてゴージャスさ。
そんなものに臆する事無く惹かれる分かりやすい女。
一度や二度、痛い目を見たらいいと思ったのも事実だ。
そうしては実際に痛い目を(どんな目かは分からないが)
見たようで、今現在は誰の側にもいない。
だったらだ。
だったら、こちらに戻って来てもよくはないかと、そう思ったわけだ。
「俺は、いつだって待ってるよ。」
「…」
「センゴクさんには、ほら。俺が何とか言うから」
「結 構 で す」
「ほら又、そう言う言い方をする」
あんな男で躓くなんて馬鹿らしいじゃないと、
これもうっかり口にしてしまえばのヒールがクザンを攻撃し、
身悶えている間に彼女は姿を消した。
あの男も、馬鹿な真似をした自分自身も憎むことしかできないのならば、
だったら全部捨てて同じように戻って来たらいいじゃないと毎度思い、
肝心な部分ばかり告げる事が出来ないまま、又を見失う。
唐突なクザン。
センゴクさんを名前だけピックアップ。
ドフラミンゴに騙された女という肩書きはどうなのか。
2010/3/24
なれ吠ゆるか/水珠 |