枯れてゆく音の花





本気の眼差しでこちらを見据えたが、
恐らく決死の思いで腕を振り上げた。
肩よりの下の高さから振り上げられても、余り意味はなさない。
だから楽に細い腕を掴み、来るところまで来てしまったのだと、
まるで人事のようにそう思ってしまった。


何となくの理で、欲しいものを手にしてきた。
障害は消せばいいだけの話だし、
よくよく考えずともロー自身海賊なのだから、
似たようなやり口でこれまでしのぎを削っていたのだ。
だから、を手に入れる際にも(こちらとしてはせめてもの優しさで)
妙な期待を抱かないように仲間を全て殺し、立場を明確にしてやったのだ。


何が問題なのかと、ここ最近は常に考えており、
昨晩寝入りばなに、ああ、あれだと思い、
その足での元へ向かった。


内側から開ける事の出来ないドアには小さな格子窓がついており、
そこから一旦中の様子を伺う。
薄暗い室内にはぼんやりと白い足が浮かんでおり、
まあ状態は変わらずかと思い錠を開ける。
逃げる事をすっかりと諦めてしまった
視線さえ寄越さず、身動きもしなかった。


ローも口を開く事無く、ドアを閉めに近づく。
床に横たわったはローに背を向けた。
気にする事無く腕を掴む。が振り払った。
もう一度掴む。左手を。
薬指に光る指輪を目にし、
やはりこいつが何もかもの原因なのだと思った。
が拳を握った。


「無駄な抵抗はやめろ」
「これだけは、嫌」
「知らねぇよ」
「嫌、嫌!!」


まだそれだけの力が残っていたのかと感心さえした。
ローの手を振り払おうともがくは哀れで、
少しの間好きにさせていたが、それも酷い事のような気がしただけだ。


この部屋に連れて来られ、まず無理矢理に陵辱され気力を奪われ、
同じ事を繰り返していれば自我さえ崩壊しかねない。
その辺りは微調整を行い、弱った心が自分だけを求めるように仕向けたのに。
やはり何事も仕上げが肝心だ。だから、今ここで仕上げを行う。


「お前がちっとも素直にならねぇ理由を考えてたんだよ、俺は」
「離して!!」
「こんなもんに縛られてるからだな。うっかりしてたぜ」
「止めて、止めてよ!!」


これ以上あたしから奪わないで。もうこれ以上奪わないでよ。
悲鳴さえも吸い込むこの部屋の壁は特注だ。
強く叩きつけられても衝撃さえ吸い込む構造になっている。
何もかもを円滑に進める為、作った。


「構わねぇよ、俺は。抵抗するんなら指を折るし、折れた指は俺が治す。
いっそ、抵抗する気も失せるくらい痛めつけてやろうか
何れにしてもお前の傷は俺が全部治してやるよ。
だからお前は死なねぇし、死ぬ事も出来ねぇ。俺が治すからな」
「ロー!!」


ぐっと力を込めればの指先が白くなり、徐々に開いてゆく。
指輪に手をかけ、一気に引いた。床に落ち、軽い音を立てる。
がそれを追うように腕を伸ばした。身体ごと引いた。
ローの腕の中に楽に納まる。そうして冒頭の行為。


どれだけでも悲しみを俺にぶつけりゃいいと囁いたローは
愛を使いを壊す。
分からない、ローの呼ぶ愛が相手を壊す行為なのかも知れない。
どの道、にもローにも、本質を見抜く事はまだ出来ていない。
只、愛なんて怖いもんだな、ポツリと呟くローも自身の業だけは知っていた。











久々の病みロー(何そのカテゴリ)
当初のローはこんなでしたね(当サイトで)
後、弱い主人公。珍しい。

2010/4/5

なれ吠ゆるか/水珠