子守唄のように愛してください





普段と何ら変わらない調子で口を開けばは僅かに笑うだけで、
だからといってどんな風に接せば彼女の心が揺らぐかも分からないでいる。
相手に合わせる事は得意でない。だから大体は相手が自分に合わせる。
これまではそのやり方で一切問題は生じなかったわけだ。


我慢なんてした例もないし、する予定もない。
求めるものは目に見える、分かりやすいもの。
だからだ。だから今、ドフラミンゴは途方に暮れている。
身体を求めても得られるものは知れているし、そんなものは腐るほど得てきた。
だから、もっと別の、違うもの。
口には出したくないが、もっと別のものが欲しいのだと思った。


「…何よ、ドフラミンゴ。何か用なの」
「連れねぇ事ばっか言うんじゃねぇよ、
「疲れてるのよ、あたしは」
「毎度じゃねぇか」


ドフラミンゴが室内に侵入しても顔色一つ変えない
疲れた身体をベッドに横たえた。危機感さえ抱かずに、無防備に。
目的が一つならこうやって、何度もの部屋を訪れる必要性はない。
柔らかなクッションに頭を埋め、
とっくに寝息を立て始めているに触れ、ふしだらな愛情を昇華させる。
それだけで済めばよかった。
ベッドに腰をかけ、僅かに沈みながらの髪を撫でる。


元々、ドフラミンゴの息のかかった島で商売をしていた女だった。
有力者全員がドフラミンゴに対し媚び諂う中、
毅然とした姿勢で介入を断った女。
最初は生意気な女だと思い、圧力をかけ、まず仕事を奪った。
ドフラミンゴを恐れ、誰一人彼女を庇う人はいなかった。


「…あんた、何してるの」
「何もしてねぇさ」
「相手なんか出来ないわよ」
「フフ、いつだってそうじゃねぇか」


それでもはドフラミンゴに媚びなかった。
元々は海賊として名を馳せていたらしく、
まあ何かしらの事情で辞めたのだろうが、
すっかり色が抜けていた為、まったく気づく事が出来なかった。


「…どうしたのよ」
「気にするな」
「気になるわね」


目を閉じたままそう呟くに他意はないはずだ。
ドフラミンゴのせいで職を追われ、
ついでに素性までばれた事実を知っていて尚、何故敵意を抱かないのか。
受け入れるわけでもない癖に。


又寝息が聞こえ始め、
今度は一段と深い眠りに落ちたらしいの手を握り、指先に口付ける。
どこにも逃げるわけではないのに、
側にいないと消えてしまいそうで怖いだなんて、そんな事言えるわけがない。
眠る姿を只、見つめるだけで幸せになれるというのに、
そんな心中は決してに告げる事がない。
そんな真似をした例がないから。やり方がよく分からないから。
愛し方なんて特に分からないから。


結局、言える道理はなく今日もまた夜は更け、
寝息だけが響くこの部屋でドフラミンゴは溜息を吐く。





たまには焦がれるドフラミンゴでもどうかと。
たまーに書きたくなるよね、焦がれ鳥。

2010/4/18

なれ吠ゆるか/水珠