予想はしていたが、ドアを開ければ散々な光景が広がっており、
うんざりとした表情で溜息を吐き出したは昨晩の出来事を予想する。
落ちたシャンデリアに床一面に広がる血潮と破片。
確か、客を呼ぶとドフラミンゴが唐突に言い出し、
使用人達が大慌てで準備をしたはずだ。
手も付けられていないフルーツに手を伸ばし、
マスカットを一つ口に放り込んだ。
ドフラミンゴが口にする客とは、一応表の商売上の相手になる。
だからは身を隠し、いざこざが起きないようにと無駄な願いをしてみた。
最悪の展開は、客を招いている際にドフラミンゴがの名を叫ぶ事だ。
名を呼ばれたという事は命を食らえという意味を持つ。
元々、そんなに血の気の多くないにとって、
ドフラミンゴの抱く命の価値は余りに軽すぎ、手に負えないと思う。
それでも呼ばれれば顔を出さないわけにもいかず、
常に上機嫌な男の隣をすり抜け、毎度毎度飽きもせず、命を食らう日々だ。
それが昨晩は名前一つ呼ばれず、
来客があっているというのに酷く静かな一日だとのん気に構えていた。
自室でうとうとと眠りに揺さぶられていれば、
一度だけ大きくドアが叩かれ飛び起きる。血の匂いがすると思った。
ドアを開け、外を伺えども人影はなく、
ドフラミンゴの所在を確認しようとも思ったが、
朝の九時を越えるまで、この屋敷内には使用人がいない。
妙な所だけ神経質なドフラミンゴは以外の人間を屋敷内に留まらせなかった。
何故だけを留まらせたかといえば、
まあ理由は同じく、使う頻度が一番多いからだ。
夜間は雑用さえもの仕事となる。
「シミが取れないな、これは」
「そんなもんは、新しいヤツと替えりゃあいいのさ」
「…いらっしゃったんですか」
「全部取り替えな、。全部だ」
気配を消すこの男は、最初からこの室内にいたらしい。
大きな図体をしながら、よくもここまで細かに気配を消すものだと関心する。
ドフラミンゴがマンゴーを手にした。甘酸っぱい香りが室内に漂う。
「別にお前が要らなくなったわけじゃあねぇぜ」
「はぁ」
「たまにはこの俺も手を下さねぇとな、面子が保てねぇのさ」
「そうですか」
どういうつもりでドフラミンゴがそんな言葉を投げてくるのかは分からない。
ズルリと嫌な音を立て、ドフラミンゴがマンゴーを喰い、
まだ実のついたままのそれを床に投げ捨てた。の足元に転がる。
「片付けなんざ、他にやらせな。お前には他にも山ほど仕事があるだろうが」
「まだ、誰も来ませんよ」
「使えねぇ奴らだ」
以前、定時を過ぎても屋敷内に使用人がいた事があった。
ドフラミンゴに指示された片づけをしていた使用人だ。
ドフラミンゴはその使用人を目にし、次の瞬間には首を刎ねていた。
それ以来、使用人達は誰一人として時間外に留まる事はない。
「俺ァ寝るぜ、。静かに、大人しくしてな」
「…」
「フ、久々に動いたら疲れちまった」
この屋敷内では何が狂っているのかが定かでない。
主人であるドフラミンゴが正常だとすれば、
恐らくが狂っているのだろうし、
仮にドフラミンゴが狂っていたとすれば問題自体がなくなる。
ここはドフラミンゴの敷地内、彼の王国だ。
姿のない血潮の持ち主は果たして
どこになおされているのだろうと考えたが、
全て使用人に任せようと思い、自室へ戻った。
「はだかのおうさま」と同じ主人公です。
…文体が変わって、分かり辛いかも知れませんが。
敬語で話す主人公という事で何となく理解して頂きたい。
しかし、迷惑なドフラミンゴだ。
2010/4/18
なれ吠ゆるか/水珠 |