皆が集まり騒ぐ様を少し離れた所から見つめている。
理由は特にないが、癖のようなものだ。
一緒になり騒ぐような年でもないし、
離れているからといって楽しめていないわけでもない。
だからといって、誰かを待っているわけでもなかったはずだ。
いや、恐らくは。
それなのに、夜も更ける手前だ。
輪から抜け出したがマルコの手を取り、勝手に連れ去る。
そんな彼女の遊びを叱る事も出来ない自分の負けだと知っている。
こんな詰まらねぇ真似をしてねぇで、素直に楽しめと言えない自分の負けだ。
はマルコの手を取りその場を抜け出し、誰も来ない場所へ向かう。
この船に乗り見つけた死角だ。
ドアを閉め、鍵をかけ準備は終了。
急かすように服を脱ぎ、はマルコを見上げる。
「…盛ってんのかよぃ」
「そうかもね」
「少しは雰囲気ってヤツを楽しめよぃ」
「そんな時間、ないでしょ」
誰かにばれる事がないよう、彼女は細心の注意を払っている。
腹の中は読めても、心までは読めない。
だから、馬鹿みたいに連れ出されるのだし、同じ事を何度も繰り返している。
まあ、そろそろ少しはお前の隠し事を見せてみろとは思うが、
こちらから口を出す部分でもない。
見えた方が燃えるだなんて言えば彼女はどうするだろうか。
引くだろうか。分からないからまあいいか。
の手は無尽にマルコを弄る。小さな掌が体を滑る。
何を求めているのかは未だ明白ではない。
「誰か来る」
「!」
「黙ってマルコ」
あれだけ発していた熱さえも忘れたように二人黙り込み息を潜めた。
ギシ、ギシと床を踏む音が近づき、の名を呼ぶ声が聞こえた。
大分、酒に飲まれているらしい。
エースだ。エースの声がを呼んでいる。
マルコの腹に乗っているを見上げれば、
どうにも神妙な顔つきをしているもので、
少しだけ悪戯心が働き、こちらも指先を滑らせた。
の腹がビクリと震え、視線がドアからマルコに向かった。
だから、これには何の理由もないし、お遊びの延長だ。
足音が遠ざかり、室内に熱が戻る。
何事もなかったかのように唇を求めるも馬鹿だし、
何も聞かない自身も馬鹿だ。
秘密の共有が類稀に見る快感を与えるからだと思いたい。
少しだけ緊張を引き摺ったの肌に触れ、ぐっと引き寄せる。
この女が誰を愛していようがどうでもいい。
何だか、今だけはそんな感情など、どうでもいいと思えた。
マルコの復讐。みたいな。
毎回、エースがちょっかいを出すので、
今回は珍しく逆にしてみました。何かごめんな。
一番悪いのはまあ、主人公ですけど。
2010/4/23
なれ吠ゆるか/水珠 |