失くすくらいなら奪い去りたい





昼過ぎまで寝て、ようやく起きたと思えば
ゴミを出す日だった事に気づくが、生ゴミの類は一切ないのだ。
単にビールの空き缶が一週間ほど長く室内に滞在するだけ。


服を脱いで洗濯機に放り込みスイッチをオン。
PCの電源を入れ、充電が終わった携帯電話を開けば
不在着信が職場から二件、メールは五件。
ざっと宛先を眺め、仕事関係だと判断し閉じる。
休みの日くらい、ゆっくりさせろ。


そのまま部屋の換気を行い、洗濯物を干し、読んでいなかった本を読む。
これが正しい休みの過ごし方だ。
誰かに邪魔される事なく好きな事をし、ゆっくりと身体を休ませる。
そんな有意義な休みを久々に満喫していれば
これだと、思う事になるとは。


業務が終わった時間帯にようやくメールの開封を行う。
電話をしてくるより先に手前で調べろと思いながら
未開封メールを開き終われば、新着メールが届いた。
嫌な予感がする。
』宛先名にそう表示されていたから。


そもそも、こっちが何度メールを送っても
返信一つ寄越さなかった癖にどういう腹積もりだ。
急に消息不明になるなんて事はこのに限りよくある事で、
まぁ今更どうにも出来ないと分かってはいるが、
そんなに振り回されている感が否めない。


いつも顔を出すバーで飲んでいるという内容のメールだ。
暇なら来いという。
そのバーなら二日前に行ったし、
その際マスターや常連達との話をした。
最近、ここに着始めた客がを気に入っているらしいだとか、そんな話。
そろそろあいつも年貢の納め時なんじゃあねぇかと誰かが言えば、
酷く心が動揺した。あいつの年貢は俺が納めさせる。














何食わぬ顔でドアを開ければ、
すっかり出来上がっているがカウンターに突っ伏していた。
その隣には見慣れない男が一人。あいつが噂の男なのか。
馴れ馴れしく肩に手を回し、何事かを耳側で囁いている。


そんなものを見せつけられれば、こちらも穏やかではいられない。
マスターが苦笑しているが、そんなのは知らねぇ。


「おい、
「んー?」


こんな女と知り合いになってどのくらいになるのだろう。
無防備な姿を皆に晒し、冷や汗モノの行動ばかりをとるこんな女。
いや、違う。危険を察知したら自分を呼ぶ。
俺はお前の番犬じゃねぇんだぜ。


「遅くなーい?スモーカー」
「えっ、何?誰?」
「お友達だよ」


突然姿を現した男に驚きを隠せない気持ちも分かる。
だけどまず、その手を離せ馬鹿が。


「ほら、帰るぜ」
「(えっ?)んー?」
「迷惑かけたな、マスター」


いつの間にか友達の枠にはめられ、
こいつはとんだ罠にかかったと、ずっと思っていた。
いいように使われ、それでも気持ちを奪われているから嫌いになれないでいた。
嫌いになれないから諦めて、もう好きだと認めてしまう。


今日はどうにもタイミングさえよく、
明日、明後日と休みが続く何とも都合のいい奇跡が起こっているわけだ。
がどういうつもりなのかと視線で訴えてくるがまず却下、
視線を上げればマスターが笑いを堪えている。


その後では常連客が興味深そうな眼差しを送り―――――
悪ぃな皆、これでゲームセットだ。


ひょいと抱き上げ、颯爽と店を出れば、がばたばたと暴れだす。
どういうつもりよ、だとか離してよ、だとか。
どういうつもりも何も、こういうつもりだとキスの一つでもしたら、
はどうするだろうか。


只、もうお前に振り回されるのは限界。
マスター達の後押しもある事だし、残り二連休で話を付ける。





ひゅー!スモーカー格好いいー!
スモーカーの更新が増えるという事は、
私が疲れているという事です。はは。
癒されたい欲求が増せば増すほどスモーカーが増えるぜ。
現代パラレルまでプラスされれば、よっぽど疲れている。
2010/6/19

蝉丸/水珠