つないであげるからあんしんしてね





この女を捕まえ、幾ばくかの月日が経過したが、
どうにも現状は回転せず、何一つ変わらない日々を消化している。
捕まえるまでは随分な手間をかけてしまい、
ドフラミンゴ自身非常に疲れていた。珍しく疲れていた。
そこまでして手に入れたかった理由は何かと聞かれても、
正直な所分からないでいる。
これまでずっと敵として対峙してきた
何故ここまで欲したのかが分からない。愛情なんてものではないだろう。
そんなものを欲しがるほど若くはない。
それに、そんなものは腐るほど手にしてきた。
だから、そんなものではないはずだ。


「…よぉ、。ご機嫌麗しいか?」
「暇だわ」
「そいつは、困ったな」
「あんたの側は、死ぬほど退屈ね」


互いに瀕死の状態で、どうにか立ち上がったのがドフラミンゴだった。
こんな目に遭わせられたのはいつ振りか、だとか
こんなにまで身が疲れきったのはいつ振りか、だとか。
思うところは色々あったが、
兎も角ようやく終わりを手にしたのだという安心だけが脳内を埋め尽くした。
このままを野垂れ死なせるわけにもいかず、
疲れた身体を引き摺り、棲家へ戻る。
部下達は死ぬほど驚いていたが、そんなものを気にしている場合でもない。
医者達にを渡し、絶対に殺すなとだけ告げ自分も寝た。


「傷も、随分治ったじゃねぇか」
「あんたが付けた癖に、何を言ってるのよ…」
「俺ァ傷モノでも構いやしねぇが…色々と困るだろうが、手前が」
「あたしの事を考えてるってわけ?ふざけてるわね」


の左足に手を置き、顔の傷をじっと見つめる。
彼女の左足は完治まで一年かかるらしい。
痛めつけすぎてしまったと少しだけ後悔したが、今更どうする事も出来ない。
自由に動く事が出来ないから、彼女は退屈しているのだろうか。


「ねぇ、あんた。どうして何もして来ないのよ」
「あぁ?」
「そのつもりじゃなかったの?」
「…まぁ、その内にな」
「何よ、それ」


退屈だって言ってんだから、今しなさいよ。
笑いながらそう言う彼女にとって、
ドフラミンゴはその程度の存在なのだ。
暇を紛らわす程度の存在。
そんな事はとっくに知っていたが、目の当たりにすれば流石に気が滅入る。


「あんたが紳士ぶっても、すぐにメッキが剥がれるわよ」
「どういう言い草だよ」
「あの男なら、そもそもあたしをこんな風に繋ぎやしないわ」


左の足首には鎖が繋がっている。逃げ出さないように。


「まぁ、そりゃあな。俺とアイツじゃ違うだろうよ」
「ばれたら怒られるわよ、あんた」
「それはそれで、面白ぇじゃねぇか」
「まず、この傷から言われるわよ」


女の顔に傷をつけるんじゃねぇ、だとか。
クロコダイルの口調を真似ながらそう言うを見つめ、
次に鎖に視線を向けた。
これがあるから、彼女は笑いながら無駄話に花を咲かせているのか。
愛だとかそんなものに興味はないが、
何事も起きない普遍なき時間は非常に魅力的だ。心穏やかに過ごせる。


「そもそも、まだ昼間だぜ」


言い訳のようにそう呟けば、詰まらない男、溜息混じりにそう返された。




連続ドフラ。39歳の衝撃の仕業なのか・・・?
久々に、疲れドフラなんですが(何そのカテゴリ)
クロコダイルを絡ませたかっただけですね。
何か、彼は紳士的なイメージが揺るがないぜ。
2010/7/2

蝉丸/水珠