何故だか力が足元から失われていくようで、 レイリーに連れられあの船を降りてからというもの、 一歩も外に出ない日々が過ぎ去っていた。 窓から見える景色は日々同じでなく、 雨が降ったりだとか晴天が広がったりだとか。色んな表情を見せていた。 レイリーは何一つ詮索せず、只ここで気の済むまで休めと笑った。 レイリーの用意したこの部屋は必要最低限の生活が出来る造りになっている。 ベッドから降りず、だらだらと時間ばかりを消費させる生活は身体を腐らせる。 いや、身体だけでなく心も。 レイリーと遭遇した時、あの瞬間に張っていた気は崩れ、 それと同時に希望のようなものも消え失せた。 レイリーの隣にロジャーがいないのだ。 という事は、どこへ行っても、どこまで行っても同じという事になる。 分かっていたが、目の当たりにすれば重みも増し、諦めが迫った。 あたしはどうして海賊になったのかしら――――― ロジャーが死んでから考え始めた疑問だ。 力をつけたのは何者にも狩られない為にだ。 力がなければ生きる意味がない。 いや、それ以前に術がない。 人買いに売られる寸前、まるで運命のようにロジャーと出会った、 少なくともはそう思った。 いや、思わなければ生きていけなかったのだ。 希望も何もない人生に光を求めた。幼い心がそうさせた。 そんな事は、とっくに分かっている。 それでも、もう止める事は出来ず、希望を掴みたいだけ、 その一心で追いかけた。 「おお、調子はどうだ。」 「ぼちぼち」 「そうか」 上手い桃を持って来たと笑うレイリーを見つめ、 決して聞く事の出来ない問いかけを飲み込んだ。 あたしはどこにいくの。 レイリーは答えてくれるだろうが、恐ろしくて聞くことが出来ない。 ねぇ、レイリー。あたしはどこにいくのかしら。 軽く水洗いした桃を手渡され受け取る。 「…そう言えばな」 皆がお前を捜しているぞと、レイリーはこちらを見ずに言う。 火蓋は切って落とされたのだ。自ら受けたに近い。 だから、そんな事は取るに足らない出来事で、 自分には失うものがないと呟けば、彼は少しだけ怒ったような表情を見せる。 「…どうしたいんだ、お前は」 「あたしはドフラミンゴに勝てるかしら」 何れ決着をつけなければ終わらないと知っていたのは、何もだけでない。 だからレイリーは答えず、微かに震えるの手を握った。 すっかりとの情報が紙面から消え、一月ほどの時間が経過する。 あれだけ騒ぎ立てた人々も、どうやら刺激が欲しかっただけらしく、 すっかり忘れてしまっているようだ。 七武海のドフラミンゴが一枚噛んでいるという噂を聞きはしたものの、 当のドフラミンゴは姿を見せない。だから全ては憶測になる。 そういえばつい先刻、赤髪と遭遇した。 相変わらず海原を放浪してやがると思っていれば、 の話をし始めるもので、お前もかと呆れただけだ。 「…聞いた話なんだけどよ」 「怪しい話だな」 「…」 「…」 「…」 真偽の程を確認する間もなく船を飛び出したマルコは、 疑う術一つ持たず向かったはずだ。 頑張れよ、だとか何とか。 他愛もない言葉をかけるシャンクスに向かい、 余計な真似ばかりしやがると呟いた白ひげは、 至極迷惑そうに溜息を吐き出した。
ちょっとした時間が経過したアダルト組。
まだ続きます…終わらせられなくてごめん…。 レイリーの回になるのか。 2010/7/30 |
pict by水珠
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