腕を伸ばしたがはすり抜けた。
だから、宙を掴み、何事もなかったかのように戻した。
散々やる事はやったわけで、だるい身体を引き摺った状態だ。
汗をかいたペットボトル、端が固くなったサンドウィッチ。
長い髪を一つにまとめながらは誰かと電話をしている。隣の部屋でだ。
詮索する必要はないし、聞き耳をたてる趣味もない。
何も気にならないといえば嘘になるが、そんな女々しい真似は出来ない。
だから、黙ったまま勝手に明かりを消し、枕に顔を突っ込んだ。
はっきりと聞き取れない程度の話し声は耳障りで、
まだの温もりが残っているシーツさえも不愉快に思える。
最中はあれだけ愛しく思えていたのに。
それにしても長い電話だ。
このとは随分久方振りに顔を合わせたというのに、
どうして毎度同じ展開を迎えてしまうのだろう。
一人でいる時は会いたくて触れたくて堪らないのに、
いざ二人になっても距離は一向に縮まらないし、
何ならより一層、離れてしまうように感じる。
まだ通話は終わらない。
の笑い声が聞こえた。
誰と話してやがる。
「…寝ちゃったの?キッド」
「…」
「寝ちゃったみたい」
誰に伝えていやがるんだと思いながら、寝返りを一つ。
わざとらし過ぎて我ながら萎えた。
ようやく声が聞こえなくなり、足音が近づく。
ギシリ。ベッドが軋み、の身体が僅かに触れた。
頭では分かっている癖に驚き目を開く。
の細い腕が背後から抱き締めてきた。
だったら、兎も角さっきの電話の相手は誰だったのかを
白状しろよと思いながら聞けない。
もう一度寝返りを打ち、の顔を胸に埋め抱き締めた。
こんな室内で得るものは余りに少なく、
身を寄せ合っても結果は変わらないと知っていた。
心一つ吐露出来ず、変化なんて求めず只、このままで。
の寝息が聞こえ始め、これでようやく眠る事が出来るとキッドは思い、
目が覚めた時に置いていかれていないようにと更に強く抱き締める。
触れ合った肌は指先から冷えていくようで、
これ以上失くさないように身を寄せ合った。
未だ(実は)続いているキッドフェスティバルです。
主人公の電話相手はローがいいだろうか。
まあ、まだ決まってないんですけど。
あえてのベポとかでもよくないかな。
2010/8/16
蝉丸/水珠
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