諦めるには早過ぎる








このまま一緒に歳を取っていくだなんて、
そんなのは心底御免だと呟いたの本心は分からない。
こちらにしてみれば最上の結末なのではないかと思えるのだが、
どうやら彼女はそんな展開は望んでもいないらしく、
冗談は止してよと嫌面を前面に押し出した。
まあ、この時点でこの女とのズレに気づいたのだが、
あえて気づかない振りをした。
認めたくない気持ちがそうさせたのだろう。


を(死ぬほど頑張って)仲間にして、
まぁそれなりの関係性を築き上げ
(たつもりだったのだが、勘違いの類だったのだろうか?)
これからようやく安定した生活を、だなんて思っていたのにだ。


海賊が何を言ってやがると思われるだろうが、
海賊は海賊、誰よりも欲深く生きているのだから
今更、自重なんてしない。


「だって、あたしより先に死ぬでしょ?マルコ」
「何だよぃ、籔から棒に」
「だって歳が―――――」
「おい」
「あ。不死鳥だったわね。もっと最悪」


あたしが先に老け込むなんて。
舌を出し、立ち上がったは何気に当たり前の事を言うものだから、
どこに行くんだよぃ、だとか置いていくなよぃ、だとか。
寝転がり、に腕を伸ばしながらだらしなくそう言えば、ヒラリと交わされる。
細い足首が遠く離れていく様を見つめていれば、
急にサッチの顔が出てきて焦った。思わず起き上がるほどに。


「なぁ~んか、いいよなぁ」
「…何だよぃ」
「今更、青春とか。そんなに美味い話は早々ねェぜ?」
「うるせェ」


それなのには戻りもせず、他のクルー達へ声をかけている。
と出会って五年。
案外長い時間が経過したと思っていたが、どうやらまだまだ足りないらしい。
人が生まれ死ぬまでの時間から考えれば確かに短いし、
まったく何もなかった所から派生した、まるで奇跡のような関係だ。


存在しているだけで満足しようと思うが、
どうにも欲深いもので、サッチのケツを蹴り上げながら、
それでもこの目は彼女を追う。




そしてついでのようにマルコ(+ぷちサッチ)
しかし、マルコの能力がその名の如く、だったら
彼は大変な人生を生きているよなあ。
2010/8/16

蝉丸/水珠