この恋情が灰になるまで

どうしてに出会ったのかは分からない。
こんな街だしこんな時間帯だ。
女の一人歩きに進められる時間帯ではない。
送っていくよ、だとかそんな言葉は決して出て来ないしだって望んじゃいないだろう。
今この街はとても不安定だから、今に限らずいつだってこの街は不安定だから。
地元にしたって変わりはしないだろう。不安定な国だから。
何だか少しだけ雰囲気が変わったように思えるのは髪が伸びたからだろうか。

「明日、学校だろ」
「それはあんただって同じでしょ」
「そりゃ、そうだけどさ・・・」

何をしているの。

「昨日、天地に会ったのよ」
「・・・」
「会ったって言うか会わざるをえなかったっていうか」

嫌な男。はそう言い煙草を踏み消した。

「どうしたんだよ」
「どうもしてないわよ」
「何があったんだよ」
「何もないわよ!!」

五月蝿いのよあんた、は怒鳴り座り込んだ。
拓海は何か言い足りなさそうな表情を浮かべ、
だけれど流石に二の句を告げる事は出来なかった。
だってお前。思う。どこまで歩く気だよ。

「バカみたい」
「バカなのはあいつだろ」
「あたしが一番バカみたい」
「だったら、そんなら、」

俺だって。言いかけて飲み込んだ言葉。
今夜は眠れるだろうか。をこの街に置き去って。
どうしようもない男ばかりだと思うを見つめながら
どうしようもない女ばかりだと拓海は深い溜息を吐いた。

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