Therefore, I am loved please.

夜半過ぎにドアを叩き少しでも遅れたら尚の事。
完全に寝入ってしまっていたらしいに声一つかける事なく
部屋に入ればダウンを脱ぎ捨てた。
合鍵を寄越せと言えば
首を縦に振らなかったものだから二度は言わない。
一人が住むこの部屋には阿含の入り込む隙間がなかった。
それでも無理やり居座り続ければ慣れる。
狭い部屋だと思っていた。

「・・・何?」
「何が」
「あたし、寝るわよ」
「あ?あぁー」

阿含が何の為にこの部屋に来るのかは未だ分かっていない。
終電のなくなった時間帯、無料のホテルだとでも思っているのだろう。










学生らしいこの男と初めて出会ったのは週末のクラブであり、
その時にはまさか未成年だとは思わず一緒に酒を飲んだものだ。
そのクラブはどうやら阿含の行きつけの場所だったらしい。
丁度その頃私生活でトラブル続きだった
週末になれば遊びに出かける事を繰り返していた。

「へぇーあんた、あそこで働いてんだ」
「知ってるの?」
「知ってる知ってる、何?企画とかやってんの?」

阿含は大体同じカクテルを飲んでいた。

「あんた何やってんの?」
「俺?」
「何もやってないとか?」
「あー・・・まぁ、まぁ。なぁ?」

阿含は酷く曖昧にその会話を終わらせた。
大体いつもいる取り巻きのような連中を一度見た阿含に
取り巻き連中も曖昧な笑顔を向ける。
何か引っかかったが別に追求するような事柄でも
そんな間柄でもなかった為も会話を終わらせる。
社内恋愛が恐ろしく面倒な結果をもたらしただけだ。


特に好きでもなかったが酷く誠実に交際を求めてきた
(そもそも社会人にもなって交際を求めてくる事自体どうなのだろう)
彼に対し慣れない事をしてしまっただけだ。
誠実な男との誠実な交際。
正直詰まらなくて詰まらなくてどうしようもなかった。

「―なわけよ」
「え?」
「何よ、俺の話聞いてねぇの?」

口調からして違うわけだ。
この男、阿含のように自分の話しかしないような
身勝手な男の方が好きだなあ、等と
まったく駄目な方向にシフト転換していた辺りだ。
当然のようにキスをしてきた阿含を
真正面からじっと見ていた瞬間に似ている。


クラブのトイレでヤろうと言ってきた阿含の誘いを
断らなかったも間抜けだったのだ。
因みにが阿含の実年齢を知ったのはそのトイレ内、
ヤっている最中だったという用意周到振りにも呆れた。









あと数秒で完全に寝入りかける、
といったタイミングで阿含はベッドに入ってくる。
ギシ、とベッドが揺れた瞬間目覚めそれは確かに不機嫌にもなる。
阿含の身体からは不特定多数の香水の香りがしているし
吐息はアルコール臭い。最悪だ。

「・・・あたし今日、仕事」
「知らねー」
「あんた学校は」
「うるせーな、手前雲子ちゃんか、おい」
「え?誰よそれ」
「俺の兄貴」

どうやら阿含も相当眠いらしい。
喋り方が少しずつ舌っ足らずになるのは眠たい証拠だ。
初めてその事に気づいた時、只のガキだと思え笑えた。
それでもこの男の唯一可愛らしい部分だという事で伝えずにいる。
伝えれば阿含の事、絶対に(それこそ意識してでも)治してしまうだろう。

「ここはあんたの家じゃあないのよ」
「あー」
「聞いてんの?」
「あー」

変な子供に絡まれている。
最初ヤっている最中に高校生だと言ってのけた阿含は
そのまんま笑いながら淫行じゃねぇか、等と口走りやがった。
で流石に高校生とヤるつもりはなかった為
(しかし場所が場所だ、こんなに体格のいい男をわざわざ怒らせる必要もない)
失敗したなあと思いながらも二度とヤる事はないとたかを括っていたのだ。


その後繰り返される
(これって青少年保護育成条例違反だよなぁ、等)
脅迫めいた誘いを予想する事もなく。
だから今日も阿含はの部屋にいる。
そんな阿含の気持ちなんて分からないが
彼は彼でそんな脅しが何の役にもたっていない事くらい気づいているだろう。


(だからどうか 僕を愛して)

まあ、あの。何て言うか。スイマセン。
時折このような戯言を書きたくなりまして、はい。
阿含より年上の方に読んで頂きたい。何て。
あーあー何か自分で書いたのに恥ずかしい。
隠そうかと思った。