All sleep a memory of burning some time

アーロンに小言を言われる前にと姿を晦ましたは窓からの侵入を開始する。
どうやらジェクトも分かっていたらしく鍵は開いていた。
ベッドに寝転がっている彼は寝た振りでもしているのだろうか。
分からないがそこにいる事に違いはない。

「寝てんの?」
「いーや」
「待ってた?」
「いーや」

この世界はやけに静かだとジェクトが呟いた事があった。
には意味が分からなかった。
この世界のどこが静かなのかと問えば
雑音が余りに少なすぎるとジェクトは言い、
それはそれで構いやしねえが、そう続けた。

「何してるのジェクト」
「何もしてねぇぜ」
「何か見てんの?」

ジェクトは床にポツンと転がったブリッツボールを見ていた。
この夜が明ければ又先へ進む。何れ終わりに辿り着く旅だ。
何故そんなにも切ない旅を続けるのだろう。
全てはシンを倒す為だと教えられはしたものの。
では何故ジェクトはそれに習うのか。

「あんた、すぐ消えちゃいそうな感じよね」
「そりゃお前も同じじゃねぇのか」
「嫌な事が多すぎたからさあ、今まで」
「そいつは悲しい人生だな、何て―」

時折酷く遠い眼差しをするジェクトに気づいてはいた。
身を寄せ合い混じる事しか出来ないのであればそれを繰り返そう。
それを繰り返し得るものはなくともだ。刹那の輪廻は果てなく綴る。

「あんたがここを見なきゃ」
「どこだ?」
「あたしを見てなきゃ消えちゃうわよ」
「大した自信だな、
「だからあんたはあたしを見てよ」
「見てるぜ」

そうして触ってる。
ジェクトの指先はやけに硬くジェクト以外の何者でもないと確認出来る。
そんな胸に抱かれながらうわ言のように呟いた。


(いつか燃やそうね 全ての記憶を)

ジェクトとたくさん話してみましょうの回。
やっぱりね、あんなジェクトでも
突然見知らぬ世界に飛ばされちゃ嫌だったろうと。
たまらんかっただろうと。