人為的厄日

指先が触れるか触れないかの危うい距離感だ。
そんな距離感を延々続けていた奇怪さと間抜けさ。
先に進む勇気が両者共足りなかったのだろう。今だから言える事だ。
何が真実なのかは誰にも分からない。
過去の全てを捨ててしまったの背を見送る事しか出来なかった自分なのだから。
再会は突然だった。再会と呼べるのだろうか。
拓海にはそう思えたしそう思いたい。きっと再会なのだ。
将五と一緒にいるの姿を目にした。
偶然といった様子ではなかった。
あんな危うい距離感でもなかった。連れて歩いていた。
たまたま通りかかっただけだ。
そうして将五は自分に気づいた。の視線が。

「久々じゃん、」 「拓海」

に二度と会えなければ全てが万事上手くいったはずだ。
きっとそうだ。そうに違いない。そうであって欲しい。
そうでもしなければ気持ちが治まらないではないか。
三人でファミレスに入り長い間話をした。
その間将五には武装戦線からの連絡が入り
最終的にファミレスを出たのはと拓海の二人となる。
少し痩せたのだろうか。オレンジの唇が物珍しく映った。

「今何やってんだよ」 「え?高校生」 「こっち、戻って来たのかよ」 「うん」

じゃあね。それだけだ。
どこに、だとかどうしてだとか。そんな説明は一切なしなのだ。
大きく手を振るを見送りながら釈然としない気持ちの行く先を捜した。

どんだけ拓海が好きなのかと