水色(GO AWAY)

「駄目、」
「駄目じゃねェ」
「嫌、」
「通らねェ」
「だって、」
「何だよ」


今にも泣き出しそうなを見つめながら
一度たりとも視線を逸らさない剣八は妙な安堵感を覚えていた。
今この時はなれていこうとしているを止める術など持ちはしないし
を止める事は出来ないだろう。
だからといって見っとも無くに縋ろうとも思いはしないし
なるようになると思う。
の邪魔だけはしたくない。
きっと―それは恐らく予想の段階。
は自分を滅法愛しているに違いない。


「・・・だったら、」


俺が出て行ってやる、それで問題ねェだろうが、
だから剣八にしてみればの邪魔をする気等毛頭なかったのだ。
仮に自分が存在する、
それがの邪魔になるのならば即座に身を消す覚悟だったし
現に今がそうなのであれば消えよう。
自分の存在がの不安を増徴させるだけなのならば
存在意義もないというものだ。
少なくとも剣八はそう思った。

最初はこうなるとは思わなかった。
きっとそれはも同じだ。もう少し幸せだと思っていた。
それは儚き願いか。無粋か。どちらでも。


「・・・嫌、」

「離れるのはもっと嫌、」


あたしを一人にしないで、はそう言い涙を落とした。
自分が消えればの小さな頭を悩ませる問題は簡単に消え去る。
少しだけ頭の悪いの事だ、
理解するまでにどれだけの時間が必要だろうか。
は自身さえ愛せないでいる。


「・・・オメェは、」


とんでもねェ馬鹿だぜ
それでもを手放せないでいる自分に愛想尽かし
剣八はの涙を撫でた。

そうそう、剣八も書いてた。