深海魚

の事だ。の事を考えている。
五指を伸ばし彼女を捕らえる策を模索した。
いいのか悪いのか。善悪で判断するべき事柄ではないのだろう。
そもそもそんなカテゴリ分けに興味はない。気にもならない。
笑顔の素敵な彼女を今夜攫いに行こう。
彼女の笑顔を奪い去り自分だけのものにしてしまおう。
きっとは自分の事を好きで、そうして嫌いなはずだ。
そんな事は分かっている。
もうどうでもいいのだ。何もかもがどうでもいい。
欲しくてどうにかなってしまいそうだ。
彼女の全てが欲しくて欲しくて堪らない。
どうしてだろうか。
こんなにも他人に対し独占欲を抱いた事はなかった。
そんなつまらない考えはどうでもいい事か。
そう。だから今こうやって五指を伸ばしに触れようとしている。
冷えた指先が温い彼女の首筋に触れじっと目を見つめる。怖気づく。息を吐く。

「ギン」

の声が響く。この部屋はどうしてこんなにも寒いのだろう。

唐突にギン。何故だ。