クラッシュ

ふと気付けば随分とテレビなんて見ていない事に気づく。
そんな事に気付いた理由といえば只一つ―
先日週刊誌に載ってしまったからだ。


どうやら先月参加させられた緑川主催の合コン
(しかもそれには単なる飲み会として誘われた)
その帰りに、あたし酔っちゃったと言う女にやたらと誘われ
(あの女、確かグラビアの仕事をしている女だ)
ラブホに連行されかけたが寸での所で逃げ出した―
そんな槌矢のベストショット。


「こりゃ、マズイ」


舞台は完全なるラブホ街、
必死に腕を振り払おうとしている槌矢が何故だろう、
女をラブホに連れ込もうとしているように見える。
今日の練習の際、伊武に差し出された(それも無言でだ)
雑誌―正直、目を見張った。
何故だか周りがやたらとよそよそしかった理由が
分かっただけでもよしとする。


「・・・電話もねぇし」


こりゃ本格的にヤバい。
そう呟き携帯に視線を向ければ不在着信があり、
思わず携帯を吹っ飛ばす勢いで確認をした。







「・・・おい、
「・・・」
「喰わねぇのか」
「うるさい」


知らねぇよと呟き溜め息を吐き出した末次は
何故自分がと飯を喰っているのか、その理由を考えていた。
何故だかやけに機嫌が悪いは出された皿の中身を
延々フォークでつついている。肉は既に細切れだ。


「なぁ」
「・・・」
「おい、
「何よ」
「携帯鳴ってるぜ」


ずっと。
ナイフで携帯を指す。
が肉に勢いよくフォークを突き刺し立ち上がった。
携帯を手に取り一旦店を出る。
ようやく落ち着いて飯が喰えると思い一皿空ければ
が走り込んで来る。
飯くらいゆっくり喰わせろよ。
店から引き摺り出されながら末次はポツリと呟いた。







「・・・何やってんスか」
「槌矢こそ何やってんのよ」
「俺、帰っていいスか」


行く先は槌矢のマンションだった。
戸も角早々に退散したい末次はに連れられ
何故だか槌矢の部屋にまで来てしまっている。
の機嫌の悪さの理由が分かりそれこそ帰りたくなった。


「何?今日はデートじゃないの」
「あれは、誤解なんスよ」
「・・・何の?」
「何か俺、言い訳がましくないスか」
「がましいのよ」
「つか、何もやってねーし」
「帰ろ、末次」
「え・・・(一人で帰りてぇ)」
!」


ここで別れては駄目だと知っていた。
だから思わず名を呼び手を伸ばす。
末次だけが目を見張り、こんな二流ドラマ染みた二人を見つめる。
次の練習の時に顔を合わせる事を考えずに。

久方ぶりの俺フィー。
というか槌矢。
俺フィーを再度全巻集めようと思ってたり。