凍えゆく

寒い季節ってのは嫌なもんだ。
マルコはそう呟いている。
朝方からどんよりと曇っていた空はその濃さを増し、
数分前からちらほらと雪が降ってきた。
ファーのジャケットを羽織ったマルコは
電灯の下でを待っていたのだろうか。解からない。


で近所のスタバ向かい温かいラテを注文していたのだ、
そんな所にマルコがいる事さえ知らなかった。


スタバを出て歩き始める。
目の前に広がるのは雪景色、地面に触れ一瞬で消えるそれ。
すれ違う人々が口々に雪だ、そう呟き愉しげに歩いている。
眼球に向かい一直線に向かってくる雪に僅か辟易とした。


駅に向かい順調に流れる人の波に乗り切れない男を見つけてしまったのはそのすぐ後の事で、
大体皆よりも頭一つはゆうに大きい男がぼんやりと立ち尽くしていた。
人の波に背を向けて。
そうして上記の台詞、寒い季節ってのは嫌なもんだ。そう呟いた。
マルコの頭には僅かに雪が積もっている。


「あんた、ここにずっと立ってたの?」
「・・・さぁ」
「寒くないの、頭、積もってるわよ」
「なぁ」


マルコは空を仰いでいる。


「一番最初に落ちたさ、雪って分かるか?お前」
「え?」
「多分、俺の顔に落ちてきたヤツだよ」


雪が降ってくる瞬間が分かるから。
だっただろうか。
にわかには信じられないような事を言っていたから。
特に言葉を返さなかったはラテを口に含んだ。
こんな場所で一人この男は何をしているのか。


「帰らないの、あんた」
「いや、帰るよ」
「飲む?」
「もらおうかな」


数百円のラテで芯から温まるこの身体を引き摺る。
駅に吸い込まれる人々は数さえ減らさず、
只雪ばかりが心なし勢いを増していた。

まったく更新せずに申し訳ない。
再開しました。凍えマルコ。