半ば笑いながら―恐らく無意識の上で込みあがっているのだろう。
窮地に陥れば陥るほどその傾向が強くなる。
まあだから、今現在γは窮地に立たされているのだ。客観的には。
明かりのついていない室内に安堵を覚え手探りでスイッチを探す。
片手にはコルクの抜けたワインのボトル、くわえ煙草のまま。
駆け引きを愉しもうと言葉ばかりを重ねた結果、
どうやら駆け引きに弄ばれているらしい。
まあ、それもなかなかに愉しい結末だと思う。
「何もない部屋ね」
「あまり帰っちゃ来ねぇからな」
「それに冷えてる」
外気は氷点下、この数日で浮浪者が二桁は死んだ。
一応暖炉なんて洒落たものもついてはいるが所詮飾りだ。
エアコンをつければが嫌な顔をした。乾燥が大敵。
我ながらよくもここまで天敵を招き入れたものだ、なんてそれはお互い様。
腹の探りあい、駆け引き、どちらにしても望んでいる。
まあにしても敵地に踏み込んでいるのだ。警戒は見せずに。
それにしたってどうしてこうも危機感と興奮は似ているのだろう。
いけないと頭で分かっている事だけが興味をそそられる対象になる。
「何か喰うか?」
「何があるの?」
「・・・頼むさ」
「どうせ、ピザとか、そんなのでしょ」
いざ確信を突かれてもいつだって咄嗟に嘘を吐けるように準備はしている。
仕事は外資系、故郷はここから数百マイルは離れた田舎、家族は信心深い田舎者―
どれだけでもリアルに答えられる。絶対に俺の秘密は言わないぜ。
今か今かとその誘いを待てばの目がこちらをじっと見据えていた。
気づかれたのだろうか、抑えの利かない好奇心に。
「全然暖まらないのね。ここ」
「そうかな」
「見てよこの息。真っ白」
外と変わらない。
の口からは耐えず白い息が吐き出されている。
そういえば己からも吐き出されていた。
果たしてγは一人暮らしなのか・・・。
という事は家賃とか払ってるのか。