stupid

不思議と手の休まる事がないスパナは
今日も今日とてこちらを、の方を見ない。
毎度の事だけれど非常に癪に障る。
だからといっての存在を無視するわけでもなく、
気づいていないわけでもない。
只こちらに視線を送る暇がないのだ。必要もきっとない。


「暇なの?
「まぁね」
「早く歳、取るよ」


ここに来たところで一切暇は潰れないのだ。
それでも来てしまう己に嫌気が差す。


冷えた、そうして薄汚れたこの部屋。
機械の匂いが充満している、髪の先にさえつく。
オイルの匂いを嗅げば思い出す、否応なしに。
どこででも思い出せるように匂いを見つけた。


そうして、その事に気づいたのが丁度昨日の事なのだ。
動揺は全身に広がった、銃口の先さえぶれるほどに。
あの白蘭が、どうしたの、わざとらしくそう問いかけるほどに。


「そう言えば昨日、死にかけたらしいじゃない」
「え?」
「白蘭さんが笑いながら言ってたけど」


何やってんの。
今だけはスパナがこちらを見ておらずよかったと思えた。
思わず赤面した己が酷く滑稽だ。誰のせいでもないのに。


「本当に、よく喋る男」
「面白いじゃない」
「なーにが」
「あの人も、も」


似てる。
スパナの言葉が妙に毒気を持ちを貫いた。
不仕付けな殺意まで、それは白蘭に対し。お門違いだ。


「・・・スパナってさぁ、外、出ないの?」
「えぇ?人を引き篭もりみたいに」
「大体ここにいるし」
「必要がないからね」


昨晩感じた(それもリアルにだ)死期により必要性が高まっただけだ。
僅かでもスパナと過ごしたい、過ごすべき必要性が。


正直、いつ死ぬか分からない。
思い出に縋るわけではないが、
どちらかといえば心残りのない状態で死にたいと願う。


「今度どこかに行こう、一緒に」
「えぇ?いいけど―」


それじゃあは死んじゃわない?
やはりこちらを向かずにスパナは言う。何事もないように。
ああ、それでも―今振り返られると困ってしまう、
赤面し奥歯さえ噛み締めたは何も答えられずにいた。

初スパナ。
故に、喋り方等は変化します。
彼は白蘭にさんをつけるのだろうか・・・