GO TO HELL

特に声をかけたわけではないが不思議と平日、
それも水曜の真夜中。そんな時間帯に会う。
場所は決まっておらず、ファミレスだったりコンビニだったり、
時には街中だったり―要はどこででも会うのだ。


そうして今日は面倒な、そうして危険な別れの後に遭遇した。
乱れた髪をコンビニのガラスで整えている最中だった。
丁度雑誌のコーナーの外で髪を整えていた
立ち読みをしていた阿含が見つけた形になる。
無様なの姿を目の当たりにした阿含はまず爆笑、
隣で立ち読みをしていた見知らぬ男性が驚いていた。


「悪ぃ女。いや、酷ぇ女」
「心配しなさいよ、あんた」
「いやいや、そりゃねぇ」


そりゃねぇよ。
未だ笑いが止まらないらしい阿含は俯いたまま呟いた。
それからは彼の独壇場、がいかに悪い女なのか、そんな話が続く。
話半分に聞きながらも阿含がまるで自分の事を言っているようで笑えた。


それにしても髪が引き抜かれるかと思うくらい引っ張られ引きずり回され、
あれは殺されてもおかしくなかったと思う。
大人しい男だと思ってはいたものの、窮鼠猫を噛む。
やはり男は男で女は女だった。
死に物狂いで暴れどうにか逃げ出したものの、
やはり別れ話は人目のある場所、
人通りの多い所でやるべきだったと後悔した。
まあ勉強だと思おう。


「この前市役所通りのコンビニで会った男だろ」
「あんたよく覚えてんのね」
「あのリーマン、やつれきってたじゃねぇか。
しかも指輪、妻子持ちかよ」
「あんた・・・見過ぎ。怖いわよ」
「つか、腕。血ぃ出てんぜ」


心の底から愛する事が出来るのだろうか。
自分以外の誰かを。その答えは未だ出て来ない。見つからない。
何なら以前より遠ざかっているようにも思える。
こちらが本気になれば相手は退くし、相手が本気になればこちらが退いてしまう。
丁度いいタイミングが何故か掴めない。
だから取り合えず近付いて来る愛情を手当たり次第に受け入れてみた。
何も残らなかった。


「あんたは何してたのよ」
「関係ねぇだろ」
「これから何するのよ」
「さぁ」


オレンジジュースが水と混じり薄くなっている。
両腕を広げ偉そうにふんぞり返っている阿含を伺いながら溜息を吐いた。




俺とお前がスゲエ似てるって事じゃねぇの。
んで必死にお互い拒否ってるけどよ、
結局落ち着くトコに落ち着くんじゃねぇの。
何て事は死んでも言わねぇ。

久々阿含。
本当はキャラが違うって事、分かってる。
もっと優しいよね、思い切り上辺だけでも。