即興絵空事

他人よりも勘が鋭いとは常々思っていた。
だから今回も間違いではないと思う。
そうしてビンゴだった時点で妙な気持ちに陥る。
もう大人なんだから。みんなもう大人なんだから。
くだらない事で考え込むなよ。
やたら月が綺麗な夜だからブラリと出かけてみた。
そうしたらに出くわした。
出くわして早々泣き顔だなんて笑える話だ。
背を向けようかとも思ったが流石にそれは出来ず近づく。
助けて。助けて。五月蝿くて仕方がない。助けて。助けて。

「・・・何やってんだ
「苦しいんですよ」
「何で敬語だよ」
「苦しくて苦しくて、うっかり死にそうなんですよ」
「何の話だよ」

珍しい泣き顔を横目で確認しながら月を見上げる冬獅郎は少しだけギンの気配を感じる。
刺すような視線だ。嫌な感触だ。どいつもこいつもバカばっかりだぜ。

「逃がしゃいいのにな」
「何?」
「そんでお前も逃げりゃいいんだよ」

面倒臭い事柄には懲り懲りだ。
だから冬獅郎は一向に動く気配を見せないに苛立ちながら欠伸を一つした。

初冬獅郎