不誠実な果実

あんたと俺は住む世界ってのが違うんだなァ。
だから俺の事は諦めて、だったか。
まったく表情の読めない(というか変わらないのだ)
マルコが言い終わらないうちにがグラスを投げつけるものだから、
こいつは堪らないと逃げ出した。


おいおい、又かよ。
何てヤジを背後に受けながらだ。


「知り合いなのか?あの女」
「あぁ、お前はまだ知らねぇか」


カウンターの端っこで飲んでいたエースがサッチに聞く。


「あの女ーーーーーはな、マルコにベタ惚れなんだよ
俺らが停泊する港、港に必ずいやがる。」
「けど見た様子じゃ、満更でもないんだろう?」
「まぁな」


体躯の薄い女だった。
夜の女ほど下品ではなく、それなのに昼間の匂いのしない女。


「悪かねぇぜ」
「悪くはないぜ?」
「何だよ」
「只、ちょっとばかし厄介なだけさ」


サッチはそう言いグラスを空ける。
名を呼ばれ向かえば、トトカルチョが行われており、
話を聞けばマルコとの件だった。









相手はたかが女、自分を愛し過ぎている女だ。
何故か逃げ出したくなり、それでも都合のいい時には抱きたくなり、
そんな事を続けていれば、この有り様だ。
自分が悪いと知っている。


「逃げるくらいなら殺してよ!!」
「そんな事、言うもんじゃぁねぇよぃ」
「あんた、いっつも逃げてばっかじゃない!!何なの!?」


それならもっとちゃんと傷付けてよ、
が叫ぶかそれは出来かねるとマルコは笑う。
決して手離したくはないのだ。


そうだねぃ、
お前に足りねぇのは耐え忍ぶ力だよぃ。
じっと大人しく(気紛れに顔を見せる)
俺を待っててくれりゃあ、それだけでいいのに。
何て、口が裂けても言えない言葉だ。


「バカ!!マルコのバカ!!」
「おいおい、そいつは聞き捨てならねぇよぃ」


傷ついちまわァ。
袋小路に追い詰められればそこがゴール、足を止め振り返る。
泣き出しそうなを抱き締め終了。


「俺が愛してるのはお前だけだよぃ」
「嘘吐き」


涙声ですぐにそう返したは諦めているようで、
流石に少しだけ心が傷んだ。
傷んだが、内心よく理解ってるじゃねぇかと思ったのは秘密だ。









「トトカルチョったって、一体何を賭けるんだよ」
が折れるかマルコが折れるかだよ」
「賭けになんのか?それ」
「どっちも折れねぇに賭けるぜ、俺ァ」
「賭けになんねぇじゃねぇか」
「うぉ、マルコ……」


いつもと変わらない飄々とした体で戻って来たマルコは
マスターにビールを頼んでいる。
の姿はどこにもなく、
いい加減俺に勝たせてくれよ、
なんてヤジが飛んでいたが無視だ。


「あの女はどうした?」
「どうもこうもねぇよぃ」


生かさず殺さずが一番、だったか。
そんな事を言ったマルコの心境が理解出来るのはまだ先の話だ。

……これ、続くの?
新世界にいる女は強いだろうという一方的な思い込み。
マルコ各話連載、みたいな……