何の迷いもなく呼び出してしまった事については、
いつだって謝る準備くらい出来ている。
頬の一つでも張られたって構わないくらいだ。
真夜中にも関わらずは言葉少なめに分かったと呟いていた。
寝起きの彼女の声は微かに掠れており、
エースの言葉を理解するまで少しだけ時間がかかったが厭わない。


どうしても無性に彼女に会いたくて、
の気持ちなんてどうでもいいから会いたくて。
都合のいい男だとは怒るだろうか。
いや、はそんな事くらいとっくに分かっている。
今更どうこう言う事はないだろう。


浮き草宜しい人生を送っている癖に寂しがるのは何故だろう。
身勝手なやり方としっていて昔の女に会いに行く性質のせいだ。
しかも場所は別れた現場。最悪だと我ながら思う。別に他意はないのだ。
只、一番記憶に残っているのがそこで、
口から出た言葉がそこだった、それだけの話だ。


一歩足を踏み入れればの辛そうな顔が思い出される。
はエースが一方的に別れを告げた時、泣かなかった。
分かったと短く呟いただけだ。
面倒な事になるかも知れないと思っていたエースにしてみれば
万々歳の別れであり、すぐさま他の女の所へ向かったというのに。
何故、今になって戻りたがる。


砂利を蹴る足音が聞こえ顔を上げた。
厚手のコートに身を包んだは白い息を吐きながら参上した。
あの長い髪が好きだったが、今は肩より少し短い程度に切られている。
呆れたような眼差しは変わらない。


「こんな時間に何よ、エース」
「寒ぃな、ここは」
「うちには上げないわよ」
「どうして」


自分から別れを告げた事さえうっかり忘れてしまいそうになる。
まだは自分を愛していると思い込めるくらいに。
手放した鳥の方がよっぽど魅力的だったなんて、
そんなものはガキの言い分だ。
が許すわけはないが、どうにか滑り込みたい。心の隙間に。
一定の距離を保ったまま
エースのテリトリー内に踏み込まない彼女を見つめ、次の言葉を模索する。
何の前触れもなくの腕を掴んだ。の肩が大きく震える。


「…やめてよ、やめて。エース」
「なぁ、俺が悪かった」
「今更、そんな事」


言わないで。
の唇を塞ぎ身体を抱き締める。
あれがさいごのきすだとしんじてたのに、
そう呟いたは別れの時には見せなかった涙を零し、
やっぱり最悪な事をしてしまっていると感じたエースは
僅かに痛む心を無視したままを抱き締めていた。


又、同じ事を繰り返す


拍手、ありがとうございました!
第四弾は日記で宣言しましたエースです。
まあ、悪い青年エースになってしまったんですけど・・・
2010/2/9