そんなつもりはなかったのに記憶ってやつは
どうにも身勝手で困るもんだと思った。
まぁ、としてもこんなタイミングで
思い出されたくはないだろう。
例えば斬った時、いや瞬間。他には何だ?
あぁ、眠る瞬間。
大体、決まって最悪な目覚めの瞬間。
そんな日常に上手く織り交ぜられたの表情。嫌になる。


基本的に世界を斜めから見ているもので、
余り綺麗な光景ではないけれど、
が隣にいた時は馬鹿みたいに世界は明るかった気がする。
こんな事を思い出しているから
日々が美しくないのだと頭では分かっている。


昨晩は夕飯時に、何の前触れもなく
ベポがの話を持ち出したもので、そんなつもりはなかったが
露骨に不機嫌そうな顔をしてしまったのだろう。
手前の顔なんて早々見ないから分からねぇよ、もう。
ベポはと仲がよかった。
馬鹿馬鹿しいが、妬いてしまう程に。
ねぇ、って今どこで何してるのかな。
そんな事、知らねぇし、興味もねぇし、
気になるんならお前が捜せばいいだろ。
別に俺は少しも気にしてねぇし。気にしねぇし。
ほぼ全部嘘だが、口には出さなかった。
顔には出ていたのかも知れないが、そんな事、知るか。


自分に非があっただなんて、決して思いたくはないが、
思い出せば思い出すたび、不思議と非を認めてしまいそうになる。
が不安を口にするたびに身体を使い、
偽者の安堵を与えていた浅はかさと同じだ。
そりゃあ、あいつも逃げ出すぜ。


どうやら今朝方からベポの姿が見えないらしい。
昼過ぎに起きてきたローがその旨を尋ねれば皆、一様に口ごもった。
捜しに出かけたのかと思った。
何だ、あいつ。エスパーかよ。


それからの事しか考えていない間抜けな頭にうんざりしながら、
あいつは俺の物だったのに、どこで何をしているんだ、だとか
本当、馬鹿なんじゃねぇの。何、考えてんだ俺は。
そもそも、が出て行ってまだ二日しか経っていないというのに、
俺も、ベポも、他の奴らも何考えてんだ。
俺が不機嫌なのはいつもの事だし、
別にの事は関係ねぇし―――――
だから早く帰って来ねぇかな。




たとえばきみをうしなうとして


拍手、ありがとうございました!
第七弾もローでした。
痴話喧嘩→周囲はた迷惑。
2010/3/6