俺がお前を抱く理由なんて
あんまりにも簡単に導き出せるじゃねぇか。
シャンクスはそう言い、相変わらずの笑顔を向けてくる。
雨垂れのせいで染みの出来た壁、薄暗い明かり。そうして湿った寝具。
そんな中でシャンクスは色んな話を、恐らく思いつきで喋っている。
どこぞの港で惚れた女の話や、皆目見当もつかない島の話。
何となく聞き流しながら話を聞いていれば
合間に名を囁かれ、聞かざるを得なくなる。
俺がここに来なくなったらお前は泣くか、だなんて
馬鹿馬鹿しい事を聞かれる事も度々で、
余りに悲しすぎて考えた事もないわと答えれば、やっぱり笑った。


「可愛いな、お前は」
「それって、何が?」
「全部さ、全部」


金払いはいい、人当たりもいい、見た目もいい。
何一つ問題はない。
そんな男が幾度も顔を見せれば感情は揺さぶられる。
身を売る仕事をしていてもだ。


「あたし、あんたがここに来てくれて凄く嬉しいのよ」
「俺もお前に会える時間が嬉しくてたまらねぇぜ」
「でも、何れあんたの話に出てくるわ」
「…」
「あたしも、話の中の女になる」
「ご機嫌を損ねちまったか」


失敗した。呟く。


「会いたくてたまらなくなる前に、これまでと同じようにしてよ」
「知らねぇだろ、これまでなんて」
「早く一人の登場人物にしてよ、シャンクス」
「悪ぃが、やり方なんて知らねぇんだ」


ベッドに寝転んだまま、
まるで他愛もないゲームを続けるように 言葉を投げるシャンクスを見下ろせば、
彼はじっとこちらを見つめている。
この淡い感情が辿り着きたかった楽園へ
この身を誘うのかと思い違いをしていた。
こんな男に囲われれば、決して




らくえんにはとどかない


拍手、ありがとうございました!
第八弾は久方シャンクスでした。
本当、凄い久々に書いた。
2010/3/14