駄目、だとか止めて、だとかだ。
そういった類の言葉を小さく呟きながら
は視線を伏せ、両腕で自身を庇った。
彼女の立場は考えないのだ。
余り考えない、というかまったく考えない。
俺はどちらでも構いやしねぇ、どの道きついのはお前だけだ。
いつだってそう思うし、本当の気持ちだとシャンクスは思っている。
それと酷く詰まらない事を幾つか。


どうしてお前は俺の元にいねぇんだかな、だとか
どうしてお前はあいつの所にいるんだろうな、だとか。
を目の前にしても平然と言ってのけるのだから、
だからは息を飲むのだろう。


全身から覇気を出し、様子を伺いがてら
白ひげ海賊団に足を伸ばせば、の姿を目にする事が出来る。
伺い程度の覇気に臆する事のない
マルコに隠れながら、こちらを見る。
思い出だとか、過ちだとか。
そういったものが胸中を埋めても口には出さない。
無粋だからだ。
一瞥がてら視線で誘う。の眼差しが歪んだ。


「…っ、シャン、」
「可愛いなぁ、。お前は」
「もう」


許して。
唇から数ミリの位置で囁けばの瞳から涙が零れた。
混乱しているのか、怯えているのか。
何れにしても原因は自分自身だと知っていた。
それでも気持ちを抑える事は出来ない。
無理はしない性質だし、どうにも性根が海賊なもので、
奪う以外の選択肢を選べないようだ。
表立てない愛は身を壊す。
いっそを奪い去ってしまえれば随分楽になれるだろう。
しかし、足りなくなる。


「もうそろそろ、ばれる頃合じゃねぇか?」
「知らない」
「どうなると思う?なぁ、お前は」
「やめて」


只、追い詰めているだけだと分かっているし、
壁際にを追いやり、逃げ場を奪った上で
口付けている現状が過ちと呼ばれる事も知っている。
気持ちが通じ合っているのかどうか、
そんな部分は分からないが、確実に孤独は増殖し、
それ故に喰らう。
犬歯で細い首に傷をつけた。
裏切りの証だと告げれば、
愛しい彼女が壊れてしまいそうで、ぐっと飲み込んだ。




のみこんだこどく


拍手、ありがとうございました!
第九弾もシャンクスでした。
前回と違う意味で性質が悪い。
2010/3/14