すれ違った瞬間に電撃が走ったなんて、
はたから聞けば頭一つおかしくなったと思われても仕方のない言い分だ。
百人中百人の目をひく美貌ではなく、
群集に埋もれればきっと隠れてしまうに違いない。それでもだ。
乾燥した空気のせいで静電気が発生したのかも知れない。
もう、それでもいい。何でもいい。
脳髄を揺さぶるような激しい衝撃に突き動かされ、
反射的に彼女の腕を掴んでいた。
掴んだ瞬間、頬を引っぱたかれた。
確かに見知らぬ人間が唐突に腕を掴んでくれば大層驚くだろうし、
それこそ不審者だと思われても仕方がない。
だからって突然引っぱたかれるとは思わず、
お前は何て気の強い女なんだと少しだけ呆れ、それでも手は離さない。
必死に誤解を解き、いぶかしむ彼女の猜疑を僅かでも減らし、
あれやこれやと恙無い話を続け一時間だ。
きっと呆れた彼女はようやく笑い、よと名前を告げた。
正直なところ、このまま彼女を連れ海にでも飛び出したかったのだが、
まあ彼女にも生活があるだろうし、
あまりにも急ぎすぎているかとも思いその日は別れた。
連絡先だけはしっかりと聞き出し。
にっこりと笑った彼女、の顔。
全て思い出し、こんな気持ちになったのはいつ振りだろう、
そんな事を思いながら一晩を過ごす。
一目見た女相手に、どうしてここまで心揺らぐのかと思えば、
理由なんて一つも見つからない事を知り、
これが恋なのかとエースは笑った。




うばわれるこきゅう


拍手、ありがとうございました!
第十弾はエースでした。
一目惚れエース。
2010/3/18