そもそもが、あんたは口が過ぎるのよと呟く
返す言葉も見つける事が出来ない九里虎は、
そげなん連れん事言うなよ、だとかそういう所が又、可愛かね、だとか
いつも通りの言葉を繋げる他、術がない。
ありとあらゆる術は出し尽くしたのだ。
だから、同じやり方で足掻くしかなくなった。


どうしてに気持ちが伝わらないのだろうと、延々考えているのだが、
考えても考えても答えが見つからないもので、身体が動いてしまう。
おいはお前の事が、そいこそ世界で一番好いとうとに、何で分かってくれんとかねェ。


「タイミングが悪いのよね」
「何ね、タイミングち」
「あたし今、いい感じの人がいて―――――」
「はぁ!?誰ね、そいは!!」
「名前とか聞いて、どうするのよ」
「おいがどがんするとか、そがんとは関係なかったい!!早、教えんね!!」
「ちょ、ちょっと!」
「ああー!もう我慢ならん!!」
「ちょっと!!」


数秒も待たずに我慢の限界を迎えたらしい九里虎は、
に飛び掛り、携帯を奪い取った。
余りの早業に反応出来ない。


「ええ!?何やってんのよー!」
「おいのに手ば出しよる、ふざけた男は誰か!」
「人の携帯、勝手に見ないでよ!!」


を片手で抑えた九里虎は、器用に携帯を操っている。
ふざけるな、だとか最悪、だとか。は一人、叫んでいるが気にも留めない。
発着信の履歴に連なるのは、『米崎隆幸』の四文字―――――


「コ、コメ!?」
「最悪!本当に見たの、あんた!!」
「あんにゃろ、いっぺん殺す!!」
「絶対止めてよ!ああ、もう最悪!!」


一人、勝手にヒートアップする九里虎はの言葉なんて聞いていない。
ぶんぶんと振り回される携帯の安否も、米崎の安否も気になって仕方がない。
まったく、これは一体どういう事だ。
こんな、昼間の公園であたしは一体何を―――――


「おい、何騒いでんだ、お前」
「コメ!?」
「あれ?何やってんの、
「隆くん!?」
「何が隆くんか!?」
「え、何だよ、これ」


そうして、まったく最悪のタイミングで姿を現した米崎は
状態を把握出来ないでいる。
意味も分からず、九里虎に殴りかかられる米崎を身を挺して守りながら、
どんな言い訳をしようかと考えていた。



い 一番嘘吐きが上手だった日


ひっさびさの九里虎。
まさかの米崎オチという。
いや、米崎は男前だよ。
2010/10/19