はじまりは解らないが恐らくは許せなかったのだろう。
許せなかった、それが一番近い感情だとは思う。
もう何もかもが許せなかった、サンジという男も自分という女も。
愛してと囁いた声もそれを鵜呑みにした間抜けさもだ。
全部、全てが許せなかった。
どうせ自分のものにならないのならば、
ここに留まらないのならば死んでしまえばいい。
その腕で他の女を抱くのならば。
こんな気持ちになる予定は未定で、
そんなつもりは毛頭なかったにも関わらずだ。
それさえも苛立つ、こんなに惨めな女になる予定ではなかったというのに。
身体が重い。しがらみや汚い欲に塗れた身体は二度と浮く事もないのだろう。
堕ちていくだけだ。どこまででも堕ちてやるさ。お前を連れて。
こじ開けられた胸の奥の奥の方。
柔らかい部分に突き刺さった棘は一生涯癒える事もないのだろう。
杜撰にそこを見せ付けたにも非はあるし、
その予定で入り込んだサンジにも非はあるだろう。どうだろう。
勝手に信じて悪かったわね、はそう吐き捨てた。
「・・・何?」
「何?」
「いや、マジでこれ何なわけ?」
浅い眠りから醒めたサンジは天井しか見る事の出来ない状態に気づく。
両手足が動かないのは何故だろう、そんな疑問はとうに打ち消された。
感覚だけが嫌に研ぎ澄まされている。
サンジを跨いだ状態、膝で立ったの右手には注射器が。
瞬間何かを打たれたのだろうと予想はついた。中身まではわからない。
死ぬのかな、そう思った。に殺されてしまうのだろうか。
咄嗟に口を突きそうになった宥めの言葉は飲み込んだ。
「何、してんだよ」
「何も、」
「俺、動けねェんだけど」
「知ってる」
が注射器を床に置いた。サンジは視線だけを動かす。
意識が明確で身体だけが動かない状態は、想像以上に恐ろしく不可解だ。
要はなすがままなわけで、抵抗も何も。何も出来はしない。
の唇が近づいた、サンジは目を閉じなかった。
舌先が唇を舐めそのまま口内に侵入を開始する。
の指先は胸元を弄っていた、感覚は確かにある。
「ん」
は目を閉じている。
サンジは目を閉じず、この状態で視覚さえ奪われれば何も残らないではないか。
の指先を確認していた。胸元から腹部へ、腹部から腰へ。性器へ到着。
の指がサンジの性器を軽く握った。サンジは片目を閉じ何かを抑える。
は何をしているのだろう。何をしたいのだろう。愛して。
「、」
「・・・」
「あー・・・」
マジかよ、諦めたようにサンジがそう呟く。
唾液で濡れたの手の平はサンジの性器に纏わりつく。
今の今まで自分が指示した通りに動く。
深く銜え込み舌先でゆっくりと舐め上げ、指を動かす。
唾液の絶えないよう唇を離さず、そうして動きも止めない。
時折深く銜える、時折激しく擦る。声を抑えた、詰まる声が何だか情けなく木霊す。
呼吸が荒くなるのもわかった、きっとも。そうして耐えている自分にさえ気づく。
はふと動きを止めサンジを見る。
もうどうにでもしてくれよ、サンジはそう思う。
どうにでもしてくれよ、どうにでもしていいから早くイかせろよ。
待って、もう少しこのままで。まともに思考は動かない。
「・・・、」
イきそう、いつもなら押さえ込むはずの両腕も今は動かない。
その代わり深く深く、喉の奥まで銜え込んだの口内は酷く熱かった。
こんな場面をピックアップしなくても…