I'm afraid it won't lead me anywhere.
(あいにく どうにもならないだろうけど)

の存在に変化が訪れたのはつい最近の事だった。
あんなにも気高く強かった が只の女に成り下がってしまった― 難なく秀吉はそう思う。
たかが女だ、そう考えようとしても無理なのだ。
歳月は前触れもなしに経過する。 望もうが望んでいまいが。誰にも均等にだ。
そんな事くらい、分かってるぜ。

一つ年上のこの女は今も秀吉の前にいる。
少しだけ思い出してみる。 ああ、何も変わってはいない。

「珍しいわね、あんたに会うなんて」
「何、やってんだよ」

酷い雨の日なのだ。
家に帰るのが億劫になる程度には酷い雨の日だ。
そんな日に顔を合わせてしまった、どうしてこんな日に限って。
意味などない、偶然の産物だ。 余り期待しては。期待なんてそんな。
は濡れた髪を放置しガードレールに座っていた。
秀吉のさす傘に雨粒が踊る。

「本当、何やってんだよあんた」
「・・・ねぇ?」

何やってんのかしらね、あたし。
雨粒が の頬を滑りまるで涙のように映る。
低く呻きかけた秀吉は思わず傘を に押し付け、何も言わず立ち去った。
は何も言わなかった。

あんたはあんたの好きにしたらいい、 欲しいっていうんなら全部持っていけばいい―
はそう言ったではないか。あの時。
全てを欲しがっていたあの頃の秀吉はそんな の言葉を鵜呑みにした。 馬鹿な。

少しだけ駆け足になっていた自身に気づいた秀吉は足を止め振り返る。
見知らぬ単車のケツに座る の姿が映った。
雨粒が目に入る。きっとそれが原因で視界が歪む。 雨粒は眼球を締める。
秀吉の渡したコンビニの傘を片手に の姿は消えた。
何やってんだ俺は、ポツリそう呟く。

妄想は果てなく続くんですね