よくないという事は重々承知だったわけだ。
だから今更他にいう事はない。
それでも時折立ち止まってしまうのは、
只形の見えない不安のようなものに押しつぶされかけるのはどうしてだろう。
あなたを信じていないわけではないわ。
あなたを愛していないわけでは決してないわ。
愛している。
「そういう、事は、よくないわ」
「今更何を言うのかネ」
「止して。あなたのやり方は分かってるわ」
「知っているヨ」
お前の事は何でも、誰よりも知っているよ、
マユリはそう言いに手を向ける。
はきつく目を閉じ唇を噛み締めた。
怖いんだ。はそう思う。
互いにずっと分かってはいたのだろう、
それでも決して触れないようにしていた理由は何だろう。
同期のこの男は余りにも残虐で余りにも幼すぎた。
昔からずっとそうだった。
「どうして、」
「何ヲ」
「どうして」
冷たい両の手がを抱き締める。
背後から。ゾクリと背が冷えた、不思議と涙さえ出て来た。
マユリはそんなの涙を拭い取り笑う。
これは何だと。知っている癖に、は呟く。
彼を拒む事は出来ない。
マユリはを拒まないから。
稀に見る珍事ではあるだろう。
誰もが驚く。ここまできてしまったのだからいい加減に諦めろと囁く声が。
「助けて」
「いいヨ」
「助けてよ」
誰に言っているのだろう、誰に助けを求めているのだろう。
マユリは決して自分を傷つけるだろう。
そうしてその傷はに植えつける。離れられなくさせる何かを。
「皆が知ったらどう思うかしら」
「興味、ないネ」
「驚くでしょうね」
「」
何かに怯え泣く彼女を見下ろしていた。
本誌でさ。素顔を見たとき思い余って書いたんだね・・・