死地へようこそ

最悪だと一人呟き何事もなかったかのように歩き出した。
最悪だ、それはもう本当に最悪なのだ。
煙草の吸殻を吐き捨てアルコールに踊らされた足元を見つめる。
下を向けば悲しくもないのに涙が零れ落ちそうで嫌になった。
最悪の理由はギンだ。
あの男一人の動向により左右される感情が疎ましい。
あんた一体どうするつもりなのよ。
だからといって特に相談する相手も見つからない。
決して他人に知らせてはならないような気もしている。
だけではどうする事も出来ないだろう。
という事はなす術がないという事だ。
最近よく同じ夢を見る。
ギンが倒れて死んでしまう夢だ。
うつ伏せに倒れたギンの顔は分からない。
息を飲み目覚めればどこかへ向かうギンの影を発見してしまいは又滅入る。
あんた一体どうしたっていうのよ。
後をつけてみれば察していたようにギンはどこかへ姿を消してしまう。
後一歩、そう思えども無理だ。
永遠に近づく事の出来ない一歩に違いない。
本当は分かっている。あえて分からない振りを続ける。自
分の為に、ギンの為に。生きていく為に。

「仕様のない女やね」
「あんただってそうでしょ」

涙で顔さえ分からないままそう吐き捨てた
依然去り行くギンの足音だけを聞いていた。

UPし忘れていたのだろうか