サルベージ

こんな思いは早々に切り上げなければならないと幾度思ったのだろう。
出来ないでいる自分にがっかりだ。
そうして毎度の如く九里虎に泣きついている自分は
果たして何をどうしたいのだろう。
ずっと携帯を弄っている九里虎はあたしの話を聞いているのか聞いていないのか―
恐らく聞いていないのだろうと思われる。
同じ事ばかりを聞かされているのだ。

女に会う用事があるという(毎度だ)
九里虎を無理矢理に引きとめたは愚痴ばかりを口にする。
辟易するのは何も九里虎だけではないだろう。

「要は好いとっとやろーが」
「そう!!」
「せからしか女やね。言えちおいは言いよったやろーが」
「だってあいつ彼女いるじゃん!!」
「そいはお前がグズグズしよったけん取られただけの事やろーが」
「・・・」

黒澤には今可愛い彼女がいる。
とは正反対のタイプの女の子だ。
そんな黒澤がの事を好きだったのは今は昔の話。
まるで気づかないに見切りをつけた黒澤は
タイミングよく告白してきた例の彼女にOKの返事を出した。

「・・・ま、おいなら奪うだけの話ったい」
「あんたはね」
「その自信のなさが一番たちの悪かったい」

やれやれと腰を上げた九里虎は何人目かの彼女の元へ向かう。
そうしては今日も不必要な切なさを抱く。
黒澤の顔が蘇った。携帯を取り出したが発信を押す事は出来なかった。

まあ何ていうか九州の言葉の懐かしかったったい(方言)