お呼びじゃないと軽く吐き捨て腕を払った女は真っ赤な唇をしていた。
気位の高そうな眼差しだ、そうして上物の着物を羽織っている。
そこいらの遊女ではないらしい―等とそ知らぬ振りを決め込むには知りすぎた。
銀時の側をふらふらとしているこの女は恐らくあの男に気があるのだろうと思う。
下らない真似だと笑った。
そうして恐らく銀時もこの女を大事にしている。
又下らないと笑う。
そうなればこちらの手も分かりきっている。
大事なものはまず奪いそうして壊す。順が逆でも大差ない。
だから晋助はに近づいた。
気の強さが災いしてか夜道を一人歩くに負はあった。
「どうした」
「・・・あんた、どっかで」
「俺が気になるか」
「別に」
一歩前へ進めばの背が板にぶつかる。
恐らく気づいたのだろう。
「大声だすわよ」
「は、出せよ」
その方が燃えるじゃねェか。
白い腕をきつく掴んだ。赤く痕が残るようにだ。
板に押し付け視線を逸らさず顔を近づける。
萎縮し動けなくなる事は予想済みだ。
「た、か、」
高杉。
そう言いかけた唇を無理に塞げば無粋にも噛み付く始末だ。
まったく躾のなっていない女だと哂う。あいつの好みかと哂う。
首を掴み少しだけ力を込め見下ろした。
「忘れるんじゃねェぜ」
「何っ・・・」
「俺はいつだってお前さんを見てる」
掻っ攫われねェように気をつけるんだな。
薄い唇の合間に赤い舌が見えた。
息を飲んだはぼんやりと晋助を見上げながら
銀時は何をしているのだろう、そんな事を考えていた。
挙句の果てにはストーキングですよ。救いがたいわあたし。