高杉を斬った理由は何だっただろう。
理由なんてなかったようにも思える。
只斬り捨てたかった。
殺す事が出来たのかどうかは今の所にも分からない。
只逃げ出したのは恐ろしかったからではないと思う。
恐ろしくはないはずだ。
晋助を裏切った事、晋助を斬り捨てた事。
何も恐ろしくはないはずだ。
ならば何故逃げ出したのだろう。
何故ならば晋助を愛していたから。
余りにもうそ臭くて笑えないとは思う。
逃げ出したところで行くあてなどないにも関わらずだ。
どの道行く先を探してくれていたのは晋助だった。
何故自身を貶めるような真似をしてしまったのだろうか。
あれほど独りにはなりたくなかったというのに。
「・・・なら手前はどうして泣いてやがる」
「晋助」
「鈍った刃先で斬りつけやがって」
「血が出てる」
「手前の仕業だろう」
晋助は責めなかった。
だからそれがとてもたまらずはやはり逃げ出したのだ。
待てと言ってくれる事を期待していた己の浅はかさだ。悲しくなる。
桂に捕まったは何も語らなかった。
つい先刻晋助のせいで痛手を負った桂はそれでもを匿い面倒を見た。
エリザベスとも仲良くなった。
それでも晋助を思い出す。決して消す事は出来ない。
どうしてだろうとは思う。
心の根っこの部分にいるのだ。彼は。
だから消す事が出来ない。分かっている。
何故だろう、桂も恐らくは分かっている。
晋助に全てを捧げてしまっているのだ。
捧げてしまった以上返却は不可―あたしのこころをかえしてちょうだい。
「どうしようもない事はある」
「・・・何?」
「お前のそれは、もうどうしようもないのだ」
可哀想に。
そう言った桂はの髪を優しく撫でる。
次に晋助がを捜していると告げた。
互いに好きで好きで仕方がないのだ。
だから到底逃げられるわけがない。
愛とはそういうものかも知れない、
そう言う桂に思いあう必要があるのかと問えば視線を落とされた。
桂は何をしているんだ。あけましておめでとうございます