雨の夜には名前を呼んで

腹が減ったと呟くムゲンはつい先刻部屋を出て行ったきりだ。
小雨から本降りにとうとう変わってしまった夜空から
降り注ぐのが雨粒なのか槍なのかは分からない。
分からないが大差ないのだろう。
所詮人斬りは人斬りだと は思うわけであって
ムゲンがどうこうという意味は毛頭ない。
子供のような男だ。手のつけられない子供。力を欲す。

「何やってんだよ」
「雨音が五月蝿くて」
「腹ァ減ってねェのかよ」
「腹は減ってないわ」

ずぶ濡れのまま戻って来たムゲンは明かりをつけたを無駄にいぶかしむ。
どうやら畜生は自分以外をまったく信用しないらしい。

「・・・あんた、血の匂いがするわ」
「あ?」
「又斬ってきたのね」
「ああ」
ムゲンの戻ったこの部屋は急に熱を持ち始め
まるで南蛮から渡った悪いウィルスに冒されたような状態を持続させる。
癖のある髪に触れれば雫が落ちた。ムゲンの目が床ばかりを見ていた。

今年はムゲンです。いやいや。熱いよ彼は(誰だ)
本当サムライチャンプルーは今更ながら素晴らしいですね