テレフォン・ザ・ブース

とても湿度の高い一日だった。
深夜から降り続く雨は性懲りもなく未だ降り続くし
どんよりと曇った空とこの校舎は同じ色をしている。
鈴蘭高校もそれ然り湿度の高さは精神面に多大なる悪影響を与えはするが
それと同時に体力さえ奪おう。

「・・・・もしもし」

携帯に着信があればその場で取る相手と
場所移動をし取る相手が存在するのはきっとみんなだ。
だから黒澤は何気なく移動した。誰にも見られないように。
雨が降れば頭がいたいと騒ぐ彼女からの電話だ、大した用ではないだろう。

「どうした?」

は別にどうもしてないけど、小さな声でそう呟く。
そういえばここ最近会っていなかった事になんて今更気づく始末だ。
夜は夜で唐突に九里虎に呼び出される事数日。
その内の半分はと一緒にいた時だった、
そうしてそのまま黒澤は部屋に戻らず―
翌昼戻れば流石にはいなかった。
急に用事が出来るという黒澤に対しは何も言わない。
黒澤の交友関係には一切口を挟まずだからきっと続いている。

「オメー頭痛いんじゃねーの」
「え?」
「・・・・・」

踊り場で話をしている黒澤の姿は
落ち着きのない様子でうろうろと歩き回っている。
そうじゃねェよ、だとか分かってるよ。
そんな言葉ばかりが黒澤の口から吐き出され
余り見慣れない様子ではある。

「・・・何やってんだ?」
「しっ!!」

今おもしろかとこたい、
でかい図体を出来うる限り小さく丸めた九里虎は背後を振り返らず
そんな黒澤の姿を上から眺めていた。
たまたま階段を降りてきていた秀吉とマサは
危うくそんな九里虎を踏みそうになり立ち止まる。

「ありゃ、黒澤か?」
「何やってんだ」

時折バンダナを巻いた頭をかく黒澤は
最終的には背中を壁につけズルズルと座り込む。
その刹那ふと上げられた視線とかち合う瞬間。

「・・・・何見てんだコラ!!」
「だっはははははは!!!がんばりなっせクロサー!」

雨音ばかりが響き渡る校内に黒澤の怒声がシンクロする。
大笑いしながら駆け出した九里虎は
きっと何人目かの彼女の元に向かったのだろうし
九里虎を捕まえ損ねた黒澤は秀吉とマサの存在にようやく気づく。

「・・・おい」
「?」
「切れてるぜ」
「!!」

思いの余り携帯を握り締めた瞬間切ってしまったらしい。
さり気無く忠告をした秀吉は少しだけ笑いを飲み込むと階段を降りた。
少しだけ蒼白した黒澤の肩を通り過ぎる際
ポンと叩いたマサは隠す事なく笑っていた。

昔っから黒澤ばかり書いていたのね。
秀吉をオチに持ってきたかった時点で何かが間違っている。