廃墟図書館

心底馬鹿な女だな、そうだったか心底間抜けだったか。
まあどちらでもにしてみれば変わりないのかも知れない。
兎も角好誠にそう言われたは少しだけむっとして俯いた。
タバコを吸い続けていればじきに呼吸が苦しくなる。
声が掠れてきたりひゅうひゅうと嫌な音を立て始めたり。
必死に隠し通そうとしても無駄なのだ。この男には知れてしまう。

「どうすんだよ、お前」
「心配なんかしないで頂戴」
「してもらえるだけマシなんだぜ」
「いつ死んでもいいのよ、あたしは」
「腹の立つ女だな」

好誠はこういう物言いを大変嫌う。
それが分かっているからは言うのだ。
自分の気持ちなんて分からない。
そうなってしまったのはいつからなのだろう。
身体ばかりが老いてしまう。
それでも好誠は大して老えないのだから不思議だ。

「今日いい天気よねェ・・・雨止んでよかったわ」
「病院に行けよ」
「こんなにいい天気なのに?ありえないわね」
「手遅れになったらどうするんだよ」
「何が?」

わざとそう言っている。
好誠の気持ちを分かって言っている。

「しんどいぜ、いざとなったらな」
「・・・」

指切りをしたその指で又タバコを吸う自分は
心底いかれていると思いながら
決して自分の誘いには乗る事のなかった好誠を思う。
何故好誠が手を出さなかったのか。何故なら彼は確実だから。
こんな危ない女に手を出すような真似はしないのだ。利口だから。
睡眠さえ削り身体を酷使する。
何故ならば嫌気がさしているから。もう要らないから。
あたしは新しく生きていけるのかしら。
きっともう無理だ。悲しいけれど。

鳴り続ける携帯には柳の名が表示されている。
悲しいけれど無理なのだ。
自分の心を知りえないまま生きていく道を選んだ
今日に限り携帯を受ける事が出来ず煙だけを吐き出していた。

わざわざ弟に電話した用件の内容は
「好誠って・・・何か病気になったよね?」
でした・・・